「‥‥‥」
「鳴くん!遅かったね、日直?」

昨日の弟扱いが気に食わなくていつもとは違い少しのんびりめに向かうと、前回と同じく準備万端のなまえさんが出迎えてくれた。
単純な俺の脳はそれだけで無性に嬉しくなって、それからすぐにそれも弟みたいだからなのだとため息をついた。

「どうしたのため息なんかついて‥‥あ、そっか。言ってる間にもうテストだもんね」
「ま、そだねえ」
「そんな心配しなくても大丈夫だよ。鳴くんあんなに頑張ってたじゃない」

なまえさんが優しいのは全部俺が弟に似てるから。そう思うとその優しさもまっすぐ受け取ることができない。それを考えると捕手ってやっぱすごいんじゃない?雅さんなら、こんな風にガキっぽく受け止めないことなんて、しないんだろうな。

「‥そういうなまえさんは?俺に教えてばっかでテスト大丈夫なの?」
「教えるのって勉強にいいんだよ?それに、家に帰ってから勉強してるし」
「そっか。‥‥あのさ、なまえさん」
「うん?」
「テストの点、良かったらご褒美ちょうだいよ」

視線はノートに移したまま、何気ない態度でそう言ってみる。するとなまえさんは「いいよ。ダッツ?」なんて小さく笑いながら言ってきた。そういうのじゃ、なくてさ。

「ほっぺにチューとかどう?なまえさんが、俺に」
「‥‥‥‥え?」
「ほら、こうやってさ」

なまえさんの腕を掴んで、顔を近づける。咄嗟に腕を掴み返して抵抗してきたけれど、男女なのだから力の差は歴然だ。

「や、やめなさいってば‥!」
「‥‥俺は弟みたいなんでしょ?ならいいじゃん」
「め、鳴くん‥!」

集中しなさい!と頭に拳骨が飛んできたので、渋々腕を離す。けどノートで顔を隠したなまえさんの耳がほんの少し赤くなっていたのを、俺は見逃さなかった。


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