あ、と声に出して落ちてたものを拾う。アイドル雑誌だ。樹が好きそうな奴。前に最近の子って可愛いけど、みんな同じような顔してるよね、って言ったらキレられたから樹の前ではもうしない。
「まだゴミありました?」
「雑誌落ちてた」
掃除当番を手伝ってくれていた星原を手招きする。なんだなんだとこちらに近づいて雑誌を覗き込む星原は、多分そんなに詳しくなさそうだ。それより、近い。
「これ見る時間まだあるんですか?部活‥」
「だーいじょぶだって!今日当番だって言ってあるし!」
「そうなんです‥?あ、でもわたしあんまり芸能人詳しくないので‥」
「まあ俺もそうなんだけど‥‥」
パラパラとめくっていると、男性アイドルの特集になった。‥‥うん、俺の方がかっこいいな。
「この中だったら誰が一番タイプ?」
「え、ええ‥?そう言われても、あんまりそういう目で見たことないんですけど‥!」
「でも俺みたいなのがタイプなんでしょ?一目惚れして、運命感じちゃうくらいにさ」
「‥‥‥‥うーーーーん‥‥」
簡単に答えるかと思ったその問いに、星原は何故か唸って悩みだした。かと思うと、突然とんでもないことを言い放った。
「確かに運命は感じてますけど、成宮くんのことそんなに男性として意識してないというか‥」
「‥‥え?」
「好みとかそう言うんじゃないんですよね‥‥」
「‥は?」
何それ。なんだよそれ。そんなの、俺のこと好きでもなんでもないじゃん。ていうか、こいつ俺に好きって言ったことあったか?‥‥分からない。分からないけど、言われた記憶もない、気がする。何これ。なんだよこれ。なんでこんなに腹立つんだろ。抑えようがないくらい無性にイライラしてきて、星原を壁際に追い詰める。
「‥‥これでも意識しないわけ?」
「え、えっと‥‥」
壁に押しやって、距離を詰める。星原の身体はいつも座って話しているから分からなかったけれど、思ったより小さい。掴んだ腕も細くて白くて、本気で掴んだらすぐ折れてしまいそうだ。
「成宮くん、部活遅れますよ?」
「‥‥分かってるよ、バーカ」
動揺どころか顔色ひとつ変えない星原に、反抗のつもりで悪態をついてから、腕を離した。掴んでいたところが赤くなってるのを見て罪悪感が募ったけれど、謝る気にはなれなかった。
なんでムカついてんのかって、なんでイラついてるのかって、考えることすら腹立たしい。歩く足先に力がこもって、無駄に大きな音を立てた。俺だけ意識して、馬鹿みたいじゃん。所詮この程度だよ、人間なんて。やけに初恋の思い出が美しく思えて、溜息をついた。やっぱり俺にはあの人だけだ。