湧き出るイライラは留まることを知らず、どんどんと俺から溢れ出す。寝る前には冷静になって、一人で怒ってた自分にも非があったかもな、なんて思ってたのに、視界の端で昨日見た雑誌と同じ雑誌を読んでる奴がいたから、またぶり返しはじめてきた。
「こ、こんにちは成宮くん‥」
「‥!」
本当にタイミング悪い奴。ぶり返してきていたイライラも相まって、星原の顔を見た途端あからさまに嫌な顔をしてしまった。今のはちょっと悪かったなと思っていたら、星原はおそるおそる俺に近づいてきた。
「成宮くん‥今大丈夫ですか‥?」
「大丈夫に見える?」
「あっあの!そんなにお時間いただきませんので‥!」
「‥‥‥何?」
頬杖をついてそっぽ向いていた顔を、少しだけ星原の方に向けた。‥‥酷い顔。バカじゃないの。そんなに泣かなくても、そんなに深刻なほど怒ってないのに。腫れた目元を見て、ずきりと心臓が痛んだ。
「‥‥昨日は、ごめんなさい」
「‥‥うん」
「成宮くんを、否定するみたいなこと言ってしまったなって、あの後反省しました」
頭を下げてもう一度謝る星原に、そんなことしなくていいという気持ちでそれで?と続きを促した。星原の言葉はひどく辿々しくて、おぼつかない。まるで、幾つも下の子供と話してるみたいだ。
「わたしはその、やっぱり人の見た目の良し悪しはわからないです」
「‥‥‥」
「でも、成宮くんがどんな見た目でも、成宮くんは優しくて、まっすぐで‥すごくきらきらしてる、とっても素敵な人だから‥‥だから、」
ああ、まただ。
「きっと、そういう人のことを、そんな成宮くんのことをかっこいいって表すんだろうなって、思いました」
「‥‥っ」
またそうやって、消えそうに、どこか遠くに行きそうな顔して、綺麗な顔で、笑う。
本当に苦手だ。彼女のこの顔が。彼女がこんな顔をしなければ、ずっと星原のくせにと言い続けられたのに。星原さんのこの綺麗な笑顔が、苦手で、大嫌いで、見たくなかったのに、‥‥‥すごく、惹かれていた。
赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、再度顔をそらせば、星原はまた怒らせたのかと焦ったように口を開いた。
「あ、あの、成宮くん‥」
「‥‥ほら、予鈴鳴ったよ。帰ったら?」
「あ、はい‥‥お邪魔しました‥」
気恥ずかしくて追い出すようにそう告げると、星原はとぼとぼと教室に帰って行った。あーもう、あれじゃまた泣きそうじゃん。これ以上不細工になってどうすんのさ。
少し考えてから立ち上がって、星原の後を追うことにする。教室に入った途端、目に見えて星原の表情が綻んだのがわかった。俺が目に入っただけでそんな嬉しそうな顔するくせに、今俺にこんな無愛想な顔させてるの、酷いと思わない?
「成宮くん‥!」
「‥‥別に。教科書、借りに来ただけだから」
素っ気なくそう返事をして、星原の顔を極力見ないようにして、教室を出た。心なしか、星原の顔がさっきより安心したような表情になっていた気がする。別に、星原を安心させたくて来たわけじゃないし、俺には関係ないけど。星原が笑ってようが泣いてようが怒ってようが、俺には関係ない。だから、鞄の中に同じ教科書が入ってることだって、全く、関係ない。