星原が来ない。待てど暮らせど、現れる様子がない。もしかして、昨日愛想のない返事をしてしまったからだろうか。そんなことはないだろうに、そんな風に自分の行動を省みるくらいには、惚れてしまっている、のか。

‥‥まあ、来ないならこっちから行ってやるまでだ。俺の登場に、馬鹿みたいに喜んで笑えばいいよ。








「‥‥倒れた?」


星原の教室にいた生徒に、『星原さんなら倒れて保健室に運ばれたよ』と告げられ、一目散に保健室へ駆けつける。途中何度か走るなと注意するような声が聞こえた気がしたか、気にしていられなかった。

保健医がいないのをいいことに、いそいそとベッドの傍へと向かう。そこには、まるで死人のように綺麗に眠っている星原が横たわっていた。


「っ、はあ〜〜‥‥勘弁してよ」


恥とかプライドとかにこだわってたら、放って置いた合間に星原が死んでしまうんじゃないか。おそるおそる頬に手を重ねてみたけど、当然ながら冷たくなんてなかった。


「‥‥ん‥」
「星原!」


ゆっくりと目を覚ました星原は、自分の頬に添えられた手から辿るようにして俺を見た。まるで夢で見ているかのようにぼうっとした面持ちで、そっと俺の手に自分の手のひらを重ねてきた。


「‥っ、体の具合は?!やっぱり、母親と一緒で病弱なわけ…?」
「‥‥‥」
「‥‥星原、聞いてる?」
「昨日‥」
「昨日?」

そこで黙ってそっぽを向いてしまった星原は、俺の手から自分の手を離して、そのまま布団へ潜り込んでしまった。悪いことをした子供のように小さな声で、昨日、雨の中外で遊んでたせいだと言われて、俺は言葉も出なかった。

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