プロローグ
――――――…


父様が死んだ。
父であるヴォルデモート卿の因縁の男、ハリーポッターの手によって。けれど、私は別にポッターを恨んではいない。

なんとなくだけど、父様がじきに死ぬであろうことは心のどこかで予感していたから。(もちろん私は予言者ではないけれど)


―――彼は、あまりにも、己の魂を引き裂き過ぎた。その末路は、皮肉なもので。笑うにも、笑えない。だけど。



[……父様はこれでやっと"生"という呪縛から解放されたってこと…よね?]


誰に言う訳でもなく、ポツリと口からこぼれ落ちる。私は自身の杖を自身の心臓に向けた。父様が倒された今、唯一の血縁者である私を魔法省が黙っているはずがない。奴らに捕われて殺されるくらいならば、私は父様の娘として、サラザール・スリザリンの血を受け継ぐ最後の者として、己自身でケジメをつけよう。


(……姫様。)


シューという蛇の鳴き声。私の肩に乗っている小さな黒い蛇。上質の黒いウロコを持つそれは、長年私に仕えてくれた最も忠実なるしもべ。名はラスク。私はクスリと微笑むとそっとラスクの頭を撫でた。よほど気持ちが良いのか、その小さな瞼を細めるとチロチロと紅く細長い舌を出し入れしている。


[お前は賢い。……ラスク、お前の主として最後の命令を与える……私が死んだ後は、逃げろ。]


(姫様っ!)


[―――アバダケダブラ。]



紡ぐ一言。それは死の呪文。緑色の閃光が辺りを包みこみ、私は瞳を閉じた。






《――ダメだよ。》


どこか遠くでそんな言葉を聞きながら、紅い光が傍で広がるのをうっすらと感じていた。

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