『審神者なる、類稀なその能力を是非とも当本丸にて発揮していただきたい。
尚、就任していただけた暁には、相応の賞与は無論、任務終了後の社会への再復帰等、手厚く対応致します。』



 先も述べたように能力持ちであるならば、こんな歳になるまで政府から放置される訳はないし、恐らく人違いでもしているのだろう。
まあ、読みながら携帯で『審神者 賞与 いくら』なんて調べたけどね。思ったよりいい金額出てきて思わず、ほほう、とか言っちゃったけどね。

 人違いだとしてもいっぺん問い合わせてみるかなあ。調べてみるうちに見習いなんてのもあるようだ知ったし、結婚願望も特にない、寧ろ特筆すべきもの何一つない人間にとっちゃあ、良いターニングポイントなのかもなあと、小さな引っ掛かりを残しつつ仕事から帰ったまんまの格好で、室内のシーリングライトの真下に突っ立って右手に携帯、左手に持つ手紙を読み進めると。



『貴女の母上様、歴代でも誉れ高い一芸一能を持った先代審神者の一子であられる貴女であるならば、今の当本丸も先代と同様、共存共栄し合えることでしょう。
どうか、お力を貸していただけないでしょうか。』



 バンッ!
何かを叩き付ける大きな音が響いて、うるせえなあ隣人、何時だと思ってんだ間も無く午前様だぞ、心の中で呟いたけど紛れも無く、それは私が起こした物音だった。

 肩が震える、口の中が渇く。床に叩き付けられた鞄からリップクリームが転がり出る。
左手に持っていた手紙が、ぐしゃりとひしゃげた。





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