09:アルバトロス

「なんであいつがカオといるんだ!」

ゴールドマスクは物陰から唇を噛みしていた。
見つめている先にいるのはカオと、シルバーキャッスルの極十郎太。不思議な組み合わせである。
マスクは偶然通りかかった出先。あの遠くに見えるのはカオ!と駆け寄ろうとしたところ、目に入ったのは一緒にいる十郎太。

二人っきりで何だ、デートなのか?!
ワナワナとマスクは怒りに震えた。

「カオは仕方ねえ!かわいいからな!でもあの剣豪野郎はカオに何かしたら兄貴が許しても俺が許さねえ!」

何か話してるようだが、離れていて聞こえない。マスクは集音機能を目一杯フル稼働させる。すると、マスクが騒然とする会話が聞こえてきた。


「…よほど好きなのだな」

「そうですね、好きかも」


えへへと照れ笑いするカオ。
いつもならカオのそんな顔がたまらなく好きなマスクなのだが、今回は見ていられない。

「カオ!」

メラメラと燃えながら、マスクは二人の前に飛び出た。

「マスクくん!」

「おお、末っ子の」

「お前!カオと何してんだ!カオは俺の…!」

赤くなるカオを見て、マスクはますます炎に勢いがついた。俺の前ではこんなにはにかむことは珍しいのに!

「あのね、マスクくん」

「カオ…」

「マスクくんには秘密だったんだけど…」

もしかして、こいつと付き合っているとか、そんなことか?と、マスクの心境は最悪の事態に備えているなどとカオは知らず。
カオは口を開いた。

「製造記念日もうすぐでしょ、どういうことしてあげたらいいのかなって相談してたの」

「でも、でもなんでこいつに!」

「極くんは前にルリーちゃんのお誕生日準備したことあるし、シルバーキャッスルではお祝いごといろんなことしてもらってるみたいだし、口がかたそうだし、野球してるし」

マスクが見たことないほどにカオはいっぱいしゃべった。

一生懸命に喋って説明しているカオの横で、十郎太は頷き聞いていた。
マスクと十郎太はアイアンリーガーなので、混線のように、考えていることが送られてきた。通信が始まる。

『某にできることはもうやった』

『本当にカオに手ぇ出してねえんだろうな』

『そんなことができるものか』

『なんでそんなことが言えんだよ』

『御主、よほど好かれているのだな』

『えっ』

マスクは口にも出し、「えっ」と声を出した。そしてカオをすぐに見たところ、顔の熱が上がる。
通信が聞こえないカオは急に目が合ったマスクに肩をビクつかせる。

「某はこれで」

「ありがとう極くん」

十郎太が席を外そうとすると、マスクの目線は十郎太に移る。

「さっきの、どういうことだコラ」

「伝えた通りだ」

『 』

再び十郎太からマスクに通信が送られた。その人間には聞こえない電波に、マスクは思考回路が止まる。
十郎太はクスリと笑いながら去って行った。俗に言う、クールに去るぜという感じだろうか。

「さっきのって何?どうしたのマスクくん」

「カオ好きだ!大好きだ!」

「な、なに、とつぜん!」

マスクは真っ赤になりながら、声を出して動く。なんだか兎にも角にも照れ臭くて。



『いつ何時も御主のことを思うカオ殿には参った』

十郎太はそんな通信メッセージを残して行ったのだから。