08:暴君風味

「マスクくん!」

「うお!」

走ってきたカオはゴールドマスクの背中に抱きついた。
こんなことは初めてだ、マスクの心はバッコバッコと荒く働いた。

「マスクくん、だいすき」

初めては続いた。今なんて言った?俺のことを好きとも自分からは言わないカオが、大好きと言った気がする。
抱きつくカオの力が強くなる。

「お…おれも大好きだぜ」

「んふふ」

背中でカオは笑っているようで、篭ったような声が聞こえてきた。息が当たった背中は熱くなる。息のせいではないかもわからない。

「マスクくん」

前は名前を呼ばれることすら嬉しくて嬉しくて。今だって嬉しいが、自分のことを好きでいてくれることの嬉しさには勝てない。いや、何だってカオにされたら嬉しい。


「カオ今日はどうしたんだ」

「マスクくんの人気ぶりを見た」

「俺の?」

「マスクくんのファン、すごくたくさんいるんだね。知ってたつもりだったけど、すごいね」

そういえば、試合の後にインタビューがあって、ファンサービスをしろとか言われて、いろいろ。
気にしたことなかった。だって、ファンはファンだと思っていた。
女はそういうことを気にするもんなのかなと考えて、マスクはふと気がついたことがある。

「もも、も、もしかしてヤキモチってやつか!妬かれてんのか俺は!」

「ちょっとだけ」

「俺のカオ〜」

向きを変えて、マスクはカオを頬ずりし始める。かわいくて仕方ない、マスクにはそれだけ。もっと妬いてもらったって構わない、それで気持ちが確かめられるならば。