11:ミルフィーユ

「誰だあいつ」

「俺の!かかかかか、か、かあ、彼女だ!」

フラッシュキッドに尋ねられて堂々と答える、つもりが吃るゴールドマスク。

「お前の?」

「カオは俺のこと好きだって!それに俺も好きだ!」

「どうだかわからねえぞ、好きってんなら食いもんと変わらねえ。本当に彼女かよ」



そこでマスクは、いつものように好きとか大好きとかではなく、別の聞き方をしてみることにした。

「カオに愛してるかって聞くんだ!」

張り切るマスクだが、タイミングもわからない上に愛だとかを考えだことがない。

「カオ!」

「どうしたの、ビックリした…」

「聞きてえことがある!俺のこと、あ、あ…あ」

「マスクくんのこと好きだよ」

「あーだから俺が言いてえのは!その、なんだ、だからっ」

ギュインギュインと内部の動きが激しくなる。なるほど、愛って重くて熱いんだなと思っている間に、カオは様子のおかしなマスクの手をとった。

「落ち着いたら言えるよ」

「お、おう」

「マスクくん」

「俺のこと愛してる?」

予想していなかった言葉にカオはすっかり固まってしまった。
急に言うのだからこの野球リーガーは。

「あっ愛してないのか?俺だけか、愛してるのは…」

「愛してるよ」

慌てたり不安そうな顔したり、百面相なマスクにカオは思わず笑ってしまった。
あまりに笑うのでマスクは言葉を挟めない。

「マスクくんのことちゃんと愛してる」

「なら、よかった…」

「好きとか愛とか、本当にマスクくんは人間みたいだ」

マスクの手に愛おしそうに擦り寄る。

「マ…」

「カオ?」

「マスク…」

マスクは屈み込み、できるだけカオに目線を合わせる。カオがこうモジモジするときは何か期待しても良いときだとマスクは知っている。内心、トクトクと良いことが起きる予感に胸が高鳴っていた。

「マスクって呼んだ方が、恋人っぽいかな」

ほらきた!
マスクは目を輝かせる。

「アナタとかダーリンとかでもいいんだぜ!」

「それはやだ。そんなのどこで覚えてくるの」

「監督とか、セーガルとかの持ってる本から」

どんな本を見たんだ。

「カオと俺は恋人だ!恋人っぽいじゃなくて!」

「マスク恥ずかしい…」

「おー!なんだか新鮮な感じがするぜ!」

「マスクくん」

「で、でも、くん付けのカオも捨てがたいぜ…」


百面相マスクは続いた。
感情も百面相ぎみのマスクは一晩中呼び方について悩んでしまったという。