03:午前9時の背中
わしゃランページじゃ!今日は待ちに待ったデートなんじゃ、もう今日が楽しみで楽しみでのう。
ソワソワと落ち着かず、ランページは横に歩いたり前に歩いたり。
初めて会った時、彼女から目が離せんかった…と自身で回想ナレーションをつけながら思い出に浸っていると、声をかけられる。
カオだ。
人間のカオはやはりとても小さい。
ランページは挟んだりぶつかったりしないように気を配りながら変身する。
「変なことしないでくださいね」
「も、もちろんじゃ!わしはちゃんと段階を踏んでやるけえの、いきなり女子に手を出したりなんぞは…!」
「いや、あの、一応あなたもデストロンですから。人質にするとか、何かの秘密を聞き出すとか…」
のこのこ来ておいて失礼なことを言っているなとカオは目を泳がせながら話す。
「そうじゃのー…忘れておったわ、自分の立場を。じゃがカオ相手には別じゃ!わしは本当にチョッキン、その…チョッキン、…好きじゃけんの」
チョッキンチョッキンとごまかし挟みながらまじめに伝えるランページはいつもより赤みを帯びていた。
「ランページさん、サイバトロンみたい」
「な!わしゃデストロンじゃ!」
「デプスチャージの方がたまにデストロンみたいなことをするし、変な話ですよね」
初めて名前を呼ばれた気がしてときめくが、デプスチャージの話を出されると、自然と眉間にシワが増えるカニ。
本当に嫌っていることがわかったところで、カオとランページは海辺へ向かう。
海は穏やかに波を作っていた。
反射する光のせいか、普段よりもカオの魅力を引き立てる。
「綺麗じゃ」
似合わないことを言う、とランページは自身の言葉を後々思う。
「本当、海って私大好き。綺麗で、大きくて」
「鈍いのう…綺麗なのはカオじゃ」
感嘆の声を出し、照れた顔をするカオはランページにはとても刺激的な映像に映った。自身がサイバトロンになりたいとは思わないが、今悪事を働くことはないだろう。悪事を働いても、メガトロンとは違ってカオはきっと良い顔をしないのだ。
「好きじゃカオ、好きじゃ好きじゃ好きじゃ!」
「3回言うのはずるいですよ」
3回好きと言われるとなんとやら。クモのあの人が言っていたことは間違いではないのかもしれない。