09:午後9時のデザート

週3でデストロンに通うことになったカオ。
おかしな話だが、ランページはデストロン内にいる時でもカオと会うことができるので、少しラッキー。

変な虫がつかないようにだけ目を光らせておく。

仕事は午前中にまず皆の部屋をまわって掃除をするように!と言われている。デストロンでも綺麗な方が良いらしい。

「デストロンにもみんなの部屋があるんですね。インフェルノさんのはアリの巣みたいでしたけど」

こうして自分の部屋にカオがいることは奇跡なのだが、「仕事中はお触り禁止!」とメガトロンが皆に言い聞かせていたので、手は出せない。

普段のようにカオは、サイバトロンにいる時も、ここにいる時も、変わらぬ表情で仕事をこなしていた。


「のう、カオ」

「はい」

「怖う無いんか?」


手を止めてランページの方を見る。


「怖いっていうのはデストロンですか?それともランページさん?」

「どっちもじゃ」

「最初は怖いって思ってましたよ。でも、ランページさん優しいから。それに、デストロンに居ても、ランページさんがいてくれるし」

「恥ずかしいことを隠さずに言うんじゃけえカオは…」


ランページの横に移動すると、カオは照れ笑いをする。
お仕置きを受ければいいのだと自分に言い聞かせ、カオに手を触れると、自然とあの時のように顔が引き寄せられる。
カオも拒むことなく目を閉じた。

しかしながらやはり、すぐ邪魔者はやってくるのだ。


「お触り禁止だギッチョンチョンー!」


クイックストライクの邪魔が入り、ランページは勢いあまって壁に激突する。

そんな簡単に甘いものは手に入らないのだ。

またねと手を振りながらクイックストライクに連れて行かれるカオを見ながら、顔をさするランページ。

チャンスも家宝も寝て待つことにしよう、そんな思いとともに日は暮れてゆくのであった。