さんらん
「カニって、たまごですよね」
突然の問いかけにランページはキョトンとする。
「そりゃあもちろん、たまごじゃ」
「私、たまごを産むメカニズム無いんですけど」
なので、できません。そう言ってランページの手を押し返す。その手はどこへ向かっていたのか。それはたまごや女などという単語から想像してほしい。
「わしは別にたまご産めとは言わんけえのう。しかしカオ、わしも男じゃ」
カオは、ハーアと大きめな溜め息と共にランページにもたれかかる。
蟹肌、と思う。ランページの表面はザラザラしているところが多々あった。
「ねえランページさん、こんな時になんですけど」
「おー」
「復活できてよかったです。おかえりなさいって、言いましたっけ」
「言うとるなら、もっと早うに連れ込んどるわい」
それはおかえりなさいが嬉しいということなのだろうか。とりあえず笑っておく。
「もういなくならないでくださいね」
「ずっと一緒におる」
「それが約束できるなら、たまに、なら良いですよ」
何が良いのか、ランページはわからなかった。だが、カオの次の言葉に察しがついた。
「たまごですよ」
ピンときた。ああなるほど。
「優しゅうするけえの」
「できる範囲でですからね。壊れちゃいますから」
後に、驚くほどにランページは優しい施しであったと語るカオは、たまごが産めたらなあなどとぼやいていた。