こころのうち

「カオは綺麗じゃ」

「へ」

突然何を言っているのか、と冗談のつもりで笑うが、ランページのその目は真剣であった。らしくない彼の言葉に戸惑う。どうしたというのだろうか。

「どこかおかしくなっちゃったんですか」

「おかしくないわい。綺麗じゃ」

顔に熱がこもるのがわかる。これじゃあ今自分もカニ顔だろう。そんなカオのことを追い詰めるかのようにランページは手を包み込んでくる。

「のう、カオ」

「はい」

「愛しとる、好きじゃ」

「は、はい」

「だから、構わんのう」

覆いかぶさるように、ゆっくり顔を近づけてくる。こんな雰囲気は今までなかった。このまま身を任せてしまおうと、カオが目をつぶったその時だ。

『おどれわしの身体好きにして何しとんじゃ!』

大きな声。どこからだろうかと目を開けたカオは、目の前のランページの様子が違うことに気がつく。いや、今日はずっと違うのだが。

「バレちゃったギッチョンチョン〜!まあいい、このまま事を運ぶギッチョンチョンー!」

「ギッチョンって、どうしちゃったんですか!キャラ間違えてますよ!」

押さえ付けられ、悲鳴をあげると、ランページの身体はワナワナカタカタとゆっくり動き、自分の胸の装甲を貫いて何かを取り出した。
それはミニサイズの何かの機械。その機械から脚が生えたかと思うと途端に逃げ出す。しかし逃げ延びる事は叶わず、ランページに叩き潰されてしまった。

「クイックストライクが作戦前に実験だとか言うて、わしの身体を乗っ取りよってのー。まったく、何を考えてとるかわからん」

「ああ、ランページさんの意思じゃなかったんだ。よかった、ランページ変になっちゃったのかと…」

機械のカケラを片しながら、チラリとランページを見る。偽物ではあったが、好きとか愛とかをランページの声で聞けたのは嬉しかったのかもしれない。また顔に熱がこもってゆく。

「変じゃったか」

「だって、ランページさんらしくないことばっかり言っていたから」

「あー」

ランページは照れると口元を隠すクセがあった。今、ランページの口元は見えない。

「あれは本心じゃ。カオを綺麗だとも、好きだとも、あ…愛しとるとも思っちょるけえのう。言わんだけじゃい」

また偽物かと調べてみたが、どうやら偽物ではないらしい。寄り添う二人に入り込む隙は無いらしい、クイックストライクは2回目の乗っ取りを諦めた。