まっています
またね、と言った人間とランページは再会する。
「カニちゃん、もう大丈夫なの?」
「大丈夫やけえここにおるんじゃ」
ごもっとも。
ランページはメガトロンの所にあまり居座りたいとは思わなかった。なので、フラフラと出歩いていることが多かった。そしてこの再会である。
「良かった」
人間はへらりと笑った。ランページはギウッとスパークが絞られた様な感覚がした。
まーたメガトロンが自分の片割れスパークをいじっているのだろう。
「カニちゃん…」
「なんなら」
「カニちゃん、ちゃんと元に戻ったらかっこいいね」
ギウッ。
片割れスパーク、また疼く。
「でっかいカニじゃけえ」
「カニは関係あるかな」
へたへたとまた笑った。ギウッ、ギウ。メガトロンはいい加減にスパークをいじくり回すのをやめてほしいとランページは顔をしかめる。
「まだどこか悪いの?」
「わしのスパークはメガトロンに握られとる、たぶんそれじゃ」
「痛いのなら無理しないで」
痛い、が、何故かいつもの痛みとは違って嫌ではない。マゾになったわけではない。痛いが、そこまで痛くはない。しかし苦しくていけない。
「エックス!何をしている!」
こんな時にやって来る災難。デプスチャージが子どもを探すナマハゲのごとくやって来た。
「デプスチャージ!」
銃を撃つよりもはやく人間がデプスチャージを呼んだことにランページは目を丸くした。
人間はデプスチャージの方へ。
「エックスと接触していたとはな」
「誰のこと?エックスって」
「カニがうつるぞ。近寄るな」
ランページはイライラと銃を構えたが、デプスチャージの間に人間がいることで、撃つことができない。
撃つことができないだなんて、何故なのかこの時のランページにはわからなかった。
今はそれよりも、デプスチャージが人間とベタベタしていることが気に入らなかった。スパークはギウギウと痛む。
「エイヒレがしゃしゃり出て来おって、おー人間、そこどかんかい!」
「エックス、今日はカオを連れ戻すのが最優先だ。見逃してやる、今日だけだ。次は無いと思え」
「カオ?」
なんだそれはと尋ねる前に、デプスチャージが人間を持ち上げることで、ランページは人間の名前がカオだと知る。
持ち上げて、落ちないようにしっかりとデプスチャージに掴まるカオが。その様子が、落ち着いて見られない。スパークはギウギウと締め付けるのをやめない。
悔しいことに自分に飛行方法は備わっていない。デプスチャージが変身してカオを空へと連れて行く。
「エイ!待たんかい!」
「言われて待つ馬鹿がどこにいる」
「なら置いていけ!カオを!」
「たわけ!そんなことをしてたまるか!」
どんどんと遠くなるエイに、ランページに焦りが見える。
引き止めねばならない、カオは離れて欲しくない。何故か。このまま撃てばエイは倒せる。しかしカオも死ぬ。
トランスミューテイトのことが頭をよぎった。あんなことを繰り返したいのか、と思うと銃は撃てない。
いいや、何故今ミューテイトのことが頭をよぎるのだ。ランページは痛むスパークの中、考えて、考えて。
「カオ!」
ランページはそれはそれは大きな声で、人間を呼んだ。
「カオー!お前が好きじゃ!」
「エックス!何を!」
「また会いに行く!待っとれ!」
デプスチャージはランページの憎さが倍増したらしい。絶対にこのカオを渡してなるものか、渡せばカオは帰ってこないような予感がした。