Valentine

アレルヤは優しく、察しが良かった。
カオがきょろきょろとしていた、小さな包みを持って。遠くから走って来ていたカオは「あっ」と声を出して、足が止まる。

「ぼくで、ごめんね」

惜しかったねと、そうやって笑えば、カオは真っ赤になるし。そうだ、おかしいことにカオはアレルヤに対してはそんな気持ちが無いというのに、ハレルヤが好きなのだ。人は中身だ、心だ、と言うがこればかりはややこしい。

「ハレルヤに渡しておくよ、って言っても、おかしな話だよね」
「なんでハレルヤに渡したいって、これが、ええと…わかるんですか」
「今日はそういう日だから」

ますます顔を赤らめるカオは、包みを握る手に力が増す。

「今日は全然出てきてくれないんだよハレルヤ」
「いなくなっちゃったんですか…?」

首を横に降る。いなくなっているのでは無い。ハレルヤはここにいる、という確信がアレルヤにはあった。出てこない理由も、なんとなしにわかっていた。
こういった行事毎は苦手なのだと思う。それに、ハレルヤは案外照れ屋で、素直ではなかった。
ほくそ笑んでいると、カオが小さな包みを差し出してきた。

「ハレルヤがもし、しばらく出てこないときは…あの、アレルヤさんが食べても同じ胃袋だからなんて言ったら傷つきますか…?」
「せっかくなんだからハレルヤに食べてもらうよ。それまでぼくが預かっておくから」

カオがハレルヤを無理に呼び出すのは良くないと思っていることをアレルヤは理解していた。しかしカオはハレルヤに渡したいと思っているのだから、ハレルヤの口に入れてやりたい。

「ありがとう、アレルヤさんも大好き!」

満面の笑みで御礼を言うと、カオは去って言った。カオが角を曲がって、見えなくなったことを確認すると包みに手をかける。

「じゃあ食べちゃおうかな」
『おい!それ俺ンだろ!』

やはりこうすれば出てくると思ったのだ。アレルヤは出てきたハレルヤにヘラヘラとする。

「ずっと居たんじゃないか。出てきてあげればいいのにズルイなあ」
『うるせー。お前こそハメやがって。それ食ったら許さねえからな』

もちろん食べる気は無かったのだが、こうすれば一番にハレルヤを呼び出せるのだから仕方がない。

『アレルヤさん大好きって言ってやがったな。お前、カオに妙な気起こしたらそのときは…』
「も、だよ、も。アレルヤさんも、だから。ハレルヤが素直に出てきていれば、ハレルヤが大好きって言われてたんだよ」

ふん、とハレルヤが照れくさそうに鼻で返事をする。

「ぼくが伝えてあげようか?好きだって」
『な、やめろ!」
「うそだよ」

いつも強気なハレルヤをからかうのは楽しいのかもしれない。アレルヤはにこにこと上機嫌に、体をハレルヤへと移した。