White day

「なんで俺が」
『なんでって。ハレルヤが渡さないでどうするのさ』

今日は3月14日。バレンタインデーの反対、つまりホワイトデーなのだ。
ハレルヤの手にはお返しのお菓子を持たされていた。アレルヤと街へ繰り出して、あれやこれやと苦悩錯誤しながら選んだものだ。選ぼうとすれば、ハレルヤはそんなもの必要ないだとか、それは俺が好きじゃないだとか、たくさん文句を言って意見した。

『昨日、カオにハレルヤが会いたいって言ってたよって伝えておいたんだ』
「な、なんでだよ!別に俺は会いたかねーってんだよ!」
『すごく嬉しそうだったよ』
「良くやった相棒」

一人コントのようなハレルヤとアレルヤはカオを待っているところだ。ずいぶんと早く待ち合わせの場所についていたが、それと変わらないくらいにカオはすぐにやって来た。

「ハレルヤ!」

駆け寄ってくるカオに目を奪われたのは間違いなくハレルヤで。アレルヤは二人を見守ることに専念していた。

「ちゃんとハレルヤだ!」
「お、おー」

嬉しそうなカオは笑顔が絶えない。ハレルヤは珍しく控えめに、大人しくなっていた。会ったら悪態ついてやろうと思っていたのだが、正直なところカオに首ったけなのだ。笑っているカオには言葉が出なくなってしまう。

「ハレルヤ、あのね!大好き!」
「ばっ!なんだってんだよいきなり!」
「だって、ハレルヤすぐにいなくなっちゃうから、いる時に言わなきゃいけないと思って」

調子が狂う!ハレルヤは熱が上がり、思考が鈍る。こんな様子を見て、アレルヤはにやけているに違いない。

「変われよアレルヤ」

そう願うが、アレルヤは答えない。頑固なところがあるのだアレルヤは。きっと今日は始終にやついているつもりだろう。

「も、もし好きになってもらえなくても良い。ハレルヤのこと好き」

カオはへへへと笑う。ハレルヤはバクバクと心臓が脈打つのを感じていた。ハレルヤはカオのことを好きだとか、愛してるだとか、言ったことがなかった。なのできっと、自分がどう思っているのかカオは知らない。不安がきっとあるだろう、嫌われているのかきたいしてはいけないのかとか考えているのかもしれない。それなのにハレルヤは、

「これ持ってさっさと帰れ」

と、お菓子を突き出して帰れと言う。まったく素直ではないし、かわいげがない。

「これってホワイトデー?」
「もらったら返すもんだってアレルヤがうるせーんだ。だから、やるよ」

要らんなら返せとハレルヤはそっぽを向く。静かにお菓子を受け取ると、カオはひとつふたつと泣き始めた。これにはハレルヤもギョッと驚き、焦った。

「なんだよ!どうした、そんなに嫌だったのか?」

どうしていいのかわからないハレルヤに、カオはしゃくり上げながら否定をした。ヒクヒクとしゃっくりのように、泣きながらうまく繋がらない言葉でカオはまた「ハレルヤ大好き」と言った。

これにはまいった。ハレルヤはこういう時、アレルヤならうまく泣き止ませることができるのにと思いながらカオを抱き寄せて背中をポンポンと叩いてあやした。
慣れていないことなので、ハレルヤのポンポンは痛い、としばらくするとカオから訴えがあった。残念だ、もう少し柔らかなカオの胸とか、良い匂いとかを感じていたかったのに。

好きだと伝えるまでは自分は死ねないのだと、まるで明日にでも死んでしまうようなことを考えた。きっといつか、アレルヤの手助けなしに伝えよう。そのためにも生きていかなければ。