Fanta

音も無く。
ああ、チュウって音が無いんだ。なんて考えているくらい余裕があるのは、目の前にいる、以蔵さんの方が余裕が無さそうなおかげだろうか。

「いきなりどうしたんです」
「なんじゃあ、それはおまんが…」

以蔵さんは口を割らない。割かけたが、言葉を飲み込んでしまった。
円卓の騎士を見ては良いなあとか、手の甲に挨拶をされたりとか、そんなカオが幸せそうだったものだから。それに対抗意識があった以蔵さんは、突然こんなことをしたのだが。なかなかに慣れないことで、行動してみたは良いものの恥ずかしいだけであった。

「以蔵さん、何か言ってくださいよ」
「おまんはわかっちょらん」

もっと嬉しそうな顔をして欲しかったのに。まるで違うのだ。不思議そうな顔しかしないので、以蔵としては面白くない。

「案外口下手なんですね」
「やかましい」
「以蔵さん、膝貸してくださいよ」
「普通は逆やろう」
「いいじゃないですか」

以蔵さんの膝に頭を預けると、なんとも言えない匂いがした。あまり良い匂いの部類ではない。「以蔵さん」と呼ぶと、以蔵さんはムッとした顔で反応を示した。

「好きです。以蔵さんのこと」
「それならもっとしおらしゅうせえ」
「してますよ。心臓トクトクしてるんですから」

触ってみますかなんて言ったら、以蔵さんはまた余裕が無くなった。