Cherie
バーテンダーも、他のサーヴァントがいないことも、事件のことも、まあまあ許そう。きっと時間が解決してくれるさ。
勝手に当てはめてサーヴァントの姿に、とか言っていたので、この人は私の知っている人でありながらも、違う人なのだよなと不思議な気持ちになる。なんだっけ、そういったパロディものはいくつか見たことがある気がするけれども。
「やっぱり飲みに来るんですね」
そう呟くと、自分のことをまるで知っているかのような言われように以蔵さんは渋い顔をした。そうだ、この人は私のことを何も知らない。でも私はよく知っているわけである。
「何見ちゅー」
「いや、なんて言うか、よく似てるんですよ」
というより同じ顔で同じ姿なのですけどね、なんて思いながらグラスを磨く。キュ、キュ、とそれだけ響く店内。
「似ちゅーのは、親か」
以蔵さんがこちらを見た。真剣に、と加えておこう。死んだ親に似てるとか、そういうことだと思われているのかもしれない。
「似てるのは、好きな人にですよ」
「ほう」
以蔵さんは一口飲む。すると少しだけ、前のめり気味に、またこちらを見た。今度は少し意地悪そうな感じで。
「おまんの男か」
「片思いですよ。そういうのは話したこと無いですけどね、きっと片思い」
「ほんならわしにせえ」
「えっ」
驚き声をもらして手を止めると以蔵さんはニッと笑った。なんだ冗談か。
「そろそろわしも身を固めたいと思」
「はーいそろそろ閉店だよ」
以蔵さんの言葉に被せて、保護者モリアーティが喋った。グラスをガンッと置く手には余程の力が入っていたのだろう。
・・・
「ええ、店に出なくて良いんですか?」
「ああ悪い虫が出入りしてるからねえ」
耳を澄ましておけなんて言っていたのは誰だっただろうか。
一方でギャングたちの方では、
「葉一枚よりも、あの女が欲しい思うちゅー」
「なにィ!」
そんな話を進めようとしていた。