Mirage

切られていたけれど、大丈夫だっただろうか。あれから、それが気になって。以蔵さんの姿をした以蔵さんでは無い人、犯人であるジークに攻撃をしかけて、反撃されていた。血が出ていたなあ。
シュンと扉が開く。もうすっかりノックも声をかけることもなく出入りされてしまう部屋になってしまった。

「以蔵さん、どうしました」
「なに、酒じゃ」
「すっかり以蔵さん好みの部屋になっちゃいましたもんね」

マイルームはバーのようにされてしまった。本物のお酒を並べることは無かったのに。でもそのおかげで、出入りする回数が増えたのだと思うと、良かったのかもしれない。

「以蔵さんの姿をした人が居たんですよ」
「前に聞いちゅうよ」
「その人、怪我してたんですよ。置いて来てしまった」

以蔵さんは、気にせんでええと酒を煽った。それでも、やはり気になってしまうのだ。あったかもしれない過去、記憶の中、怪我したあの人はどうしただろうか。

「向こうの以蔵さんね」
「おう」
「私を嫁にしてくれそうだったのね」

ブッ!と以蔵さんは酒を吹き出した。

「だから尚更のこと、どうしたかなと思って」
「どういうことになっとるんじゃ!おま、おまんを嫁に」

嫁にして良いのは自分だけだと叫びたかったが、まだ酒が足りない。グビグビと以蔵は酒をすすめる。

「そいつは死んでもかまわん!怪我して当然や…」
「どうしたんですか、悪酔いしますよ」
「なんちゃやない!酌せえ!」

お酌をすることになった今日の夜は長い。