おとうさん

「デプスチャージ〜」
「んん、おお」

エイ状態のデプスチャージに乗り、すり寄ったり抱きついたりとスキンシップをとることが好きだった。カオからしてみれば、デプスチャージはお父さんのようで落ち着くのだという。
デプスチャージも悪い気はしていなかった。カオは人間なので重たくも感じていなかったし、ずっと柔らかな生き物がくすぐったいくらいに遊んでいるのは微笑ましかった。顔には出ないものの、こんな日が続けばいいのだと思っていた。

「な、カオ!またそのエイと!」
「ランページさん」

ランページがやって来ると、それは顔に出るデプスチャージであった。
正直なところ、ランページとは仲良くしてほしくない。だが、カオはランページと何故だかよろしくやってしまう関係になってしまった。

「わしともっとそうやって…く、おどりゃエイ!どうやっとるんじゃあ!カオをどうやってそんなに密着させとるんじゃあ!」
「フン。そんなこと知ったことか」

ぎゅーっとしてほしい。イチャイチャしたい。ランページはやはりそれはいつまでも望んでいることらしい。ランページは誰よりもカオのことが好きだと思っていた。

「ランページさんと遊んで来ても良い?」
「日暮れまでに帰るんだぞ」

日が暮れたら何をされるかわからん。とデプスチャージはランページをひと睨み。本当は行ってほしくないが、撃ち合いをして、また共倒れ、カオを泣かせることは嫌だった。仲間が死んで一人残ることの悲しみは、デプスチャージには痛い程わかっていたからだ。

両の手を広げてカオを受け入れ体制になっているランページに向かってカオは駆け寄る。ツルツルとしたデプスチャージと反対に、ランページは少しゴツゴツザラザラとしているところがあった。そんな感触の違いに、相手が代わったのだなと認識し直す。

「ランページさん、今日はどこに行くの」
「そうじゃのー、西の方へでも行って…」

綺麗な夕日を見ながら良い雰囲気になりたい、とランページは思っていた。なにかとランページはカオにプロポーズする時を狙っているのだ。
そんなランページを横目に、カオは忘れ物した!とデプスチャージのところへ戻る。

「行ってくるね」

そう言いながら、デプスチャージにチュッとする。デプスチャージは驚き、目を見開く。くすぐったい。カオを大事にしなくてはと思った。優しく笑うとデプスチャージは「ああ、行ってこい」とカオを送り出す。

もちろんランページは今にもデプスチャージにミサイルを撃ち込みそうになっていたが、カオが「行こう」とパ!と笑ったことで、怒りはどこかへ下がっていった。