とおくへ

カオはデプスチャージによく懐いていた。
デプスチャージも案外カオを孫のようにかわいがっていた。チータスは俺もかわいがってほしいじゃあん!と言ってはゲンコツをもらっている。

今日もデプスチャージと寄り添って散歩をするカオ。

「それが気にくわんのじゃ」

そして嫉妬するカニのランページ。
やはりデプスチャージ死すべし、と草陰でランページは銃を構える。最近のデプスチャージはカオといる時、ランページを察知しても無視をしている。前のようには撃ってこないだろうと確信があるからだ。それに、戦うことでカオを巻き込むことはできない。こういったことが日常的になってきた。

「カオ」

大人しく出てくるカニ。
フフンと笑うデプスチャージ。大人しいカニがおかしく見えるのであろう。

「ランページさん!」
「しおらしいカニだな。君が悪い」
「黙っとれ酸っぱいエイ!」

火花を散らしてエイとカニは言葉で撃ち合う。

「カオ、わしと行こう」
「どこへ?」
「エイに邪魔されんとこじゃ」
「待て。許すと思うのか」

ランページはデプスチャージからカオを引っ張り抜く。

「待て!」
「カオ、掴まっとれよ」

走り出したランページに落ちないように掴まるカオは、ランページの顔を見上げていた。結局いつもこうなるのだ、と思いながら。

「ランページさん、今日はどこまで」
「遠くへ行くけえのう」
「いつもそう言って」

どれだけ遠くへ行くと言っても、ランページは夜深くなる前には帰って来られら場所を選んでくれた。配慮しているのかもしれない。

「カオはもっとわしの時間を作れや」
「考えておくから」
「ああ」

家族や仲間との時間と、好きな人の時間は難しい。