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「フットには言わないで」
風邪をひいたカオの一言である。
ゴールドマスクはひとつため息をつく。今日は大切な試合があるのだ。
サッカーの試合のため、特別先にゴールドフットはウォーミングアップに入っていた。そしてマスクは新メンバーとのフォーメーション合わせの為、後半のみの予定であった。マスクはそれを理由にカオの迎えを頼まれたのだが、このざまである。
「試合は中継を見るから、フットには、
どうしても抜けられない用事があるって言っておいて」
「黙ってろってのか?」
「フットは優しいからきっと心配してくれると思うんだけど、そうしたら試合に影響あるかもしれないから。そうなの、フットって優しいの。ね、マスク」
ゼエゼエと話すカオに、マスクはまたため息をつく。惚気は風邪でも減らないらしい。
「なんだあいつ来ねーのか」
「どうしても来られないらしいぜ」
フットはマスクが連れてくると思っていたカオの姿が無く、肩を落とす。
寂しいだとか、残念だとか言う彼ではないが、ガッカリしているのはマスクの目にも明らかだ。
あいつが試合に来ないことなんてなかったと、フットは心にモヤモヤする感じを覚えていた。
「マスク、代わりに前半出られるか?」
「出られるけどよう、監督がきっと許してくれねえぜ?」
「すぐ戻る」
手のかかる兄だ、と内心思いつつも、マスクはそれ以上止めることはできなかった。監督になんて言えば良いのやら。
フットは迷うことなくカオの家へ向かった。
「カオ!居るんじゃねえのか!返事しやがれ!」
と、叫ぶ声。カオの家の前でフットが声を張り上げていた。
すると、窓が開き、カオが顔を出す。
「フット!試合はどうしたの!」
「うるせえ!なんつーツラしてやがんだ!お前その声からして風邪でもひいてんだろ!」
「マスクが喋ったの?!」
「やっぱりマスクは知ってやがったんだな!」
鬼の形相でフットはカオの部屋へ走って行った。ノックもせずに開けられたドアの先にはカオがベッドに座っている。
「ちょっとフット!試合試合!」
「試合よりカオだろ!なんで言わねえんだ!」
「ひゃー熱が上がってしまうフット」
冗談ぽく笑ってみせるが、フットからしてみればそれが痛々しい。
そんなことがフットの険しい顔からしてカオに伝わる。
「フットごめんね、試合…」
「くどい。なんで俺に一番に言わねえんだ」
「だって心配かけたくなかったんだもん」
フット優しいから。そう呟くと、カオは布団に横になる。フットに背を向けて、胎児のように丸まった。
「優しいからやっぱり試合放棄して来ちゃったじゃない」
ぐすぐすと泣きべそをかいているようで。カオはあまり泣かない方だと思っていたフットは驚く。優しく背中をさすってやれば、だんだんとすすり声は小さくなっていった。
「フット!」
「あーうるせえ、ずっと寝込んどけば良かったんだよ」
完治したカオは前以上にフットにベッタリであった。
もうひとつ変化があったとすれば、フットは前よりもベッタリを嫌がる様子は少なくなったこと。口ではなんだかんだと言いつつも、前のように引き離したりしなくなった。
「フット大好き」
「わかったわかった」
相変わらずの様子にマスクは、まったく目のやり場に困るぜと笑っていたという。