3.5
ゴールドフットは避けられていた。
気のせいかとも思えたが、どうやら気のせいではなきようで。
普段なら自分の顔を見ればすぐに近寄ってくるカオが、目も合わせずに走り去ってしまうのだ。
嫌われたのかもしれないと考え、どこかまだ悪いのではないかと考え、フットは悩んでいた。
思えばいつからだろうか、カオが自分を追いかけるようになったのは。そんなことをぼんやり考えていれば、ジュースを買っているカオに出くわした。
フットは反射的に逃げようとするカオをつかんだ。
「お前最近変だぞ!」
「そんなことない!普通だって!」
「俺の顔見て逃げるじゃねえか!」
カオの目は風ぐるまのように、あちらこちらへとぐるぐると動いた。何かを言いたげではあるが、言葉にならないようである。
「いつもこっぱずかしいこと言うくせして、今日はだんまりか」
「それは…フットが、その」
ボソボソと続きを話しているようたが、フットは音を拾えない。
「俺は」
「うん」
「お前のこと」
「う、うん」
「す」
「いやー!言わないで言わないで!恥ずかしい!フットにそんなこと言われたら嬉しくておかしくなっちゃう!」
突然のカオの大きな声にフットの回路はバチバチと音を立てる。ボソボソと話していたものだから、小さな音でも拾えるようにしっかりと準備していたのだ。フットの頭はキンキンである。
「お前はいつも自分で言ってるじゃねえか好きだ愛してるだなんだって!」
「自分ではいいけど、フットからは言われたことないし、あんまり素直に優しくされるとかなかったんだもん!」
カオの顔は真っ赤になっていた。
フットはあまりそういった彼女の顔を見たことがないが、好きな顔のひとつである。
「俺はカオ、好きだぜ」
「あ、ありがとう」
「まあ、兄貴とかマスクとか居たらよ、俺だってプライドがあるっつーか、兄弟には見せたくねえっつーか」
「2人のときは優しくしてくれるの?」
「ああ、してやるよ」
えへへと笑ったカオの顔を見ると、フットの内部は、軽いショックサーキットを受けたような痺れを感じた。
それは嫌な痛みではなかったし、嬉しそうなカオの顔に、フットの顔には自然と笑顔があった。
「あ!今やらしいこと考えたでしょ!フットが笑ってる!」
「な…考えてねえ!」
「2人で会うってそういうことのためなんだ!やらしい!フットのムッツリスケベ!」
「誰がムッツリだ!ンなこと言ってるなら本当に食っちまうぞ!」
「どうぞ」
自分の服の襟を引っ張って鎖骨を見せつけるような仕草をするカオに、フットは少し赤くなりながら、またいつものように怒鳴っているのであった。