つづきのはなし
「ミーくん大変だよー!」
「どうしたのコタローくん」
カオは出て行ってしまった。
こんな自分では、また剛博士に怪我をさせてしまう、家を焼いてしまう。
あてもなくカオは歩いていた。
「せめてライターなら、役目もあったかもしれないのに」
今の自分は熱制御のできない壊れたストーブだ。
それでも、一人で生きていくにはまず、働かないといけない。カオは働き口を探すことにした。そんな時。
「どけどけ!」
「キャ!」
この町はどうしてか、事件が多い。
カオがたまたま居合わせたお店に現れたのは覆面の男たち。
強盗。よくもまあそんなに悪い人がいるものだ。強盗集団は、発砲で脅し、金よこせと叫んだ。
それがよくなかった。
驚いたカオは発熱し、火元となった。しかも強盗たちは、逃亡の際に、ガソリンを撒いて火を放ちずらかろうと思っていたために、偶然にも大爆発。火の海となった。これはこの町ではよく起きることである。なんて非常識な町なんだ。
この事件は嫌でも町中に知れ渡ることになる。大きな爆発があったのだ。気がつかない方がよっぽど呑気だろう。
「まだ残ってる人はいませんかー!」
そんな救急隊員の声が聞こえる。カオは返事をしなかった。だって自分は、このまま消えた方がよっぽど世の中のためなのではないかと思ったからだ。
「こんな寒くもない日に、火元がストーブじゃおかしいかしら」
崩れてくる天井を見ながらカオは呟く。
「おかしいよ!」
天井から返事が返ってきたと思えば、刃物で斬りさかれる空。
「カオちゃん!何やってるの!」
「ミーくん!」
捕まって!と伸ばされた手を掴むことができない。自分が帰ってもいいのか、また博士に怪我をさせたら。不安が押し寄せる。
「戻ってもきっと迷惑になる!私は行けないよ!」
「迷惑なもんか!」
「博士に怪我をさせたら、ミーくんに嫌われる、それなら消えた方がいい!」
「嫌うもんかこんなに好きなのに!」
驚く間も無く天井は崩れた。
アームの支えにより、ミーくんは何とかつぶされずに済んだ。一歩遅く、ミーくんの手は間に合わず、カオは瓦礫の下敷きになった。
ばちばち。意識がプゥーンと戻る。そこには、見たことのある天井。あの火の中の天井ではなかった。たしかに自分はつぶされたはずなのに。
「わたし…」
「気がついた!気がついたぞ!」
側には剛の姿。大手術の後だ。
「カオちゃん、痛むところはあるかい」
カオはふるふると横に顔を振る。
「ごめんね、前のパーツはボロボロになってしまったから。別のパーツを組み合わせたんだ」
ペタペタと自分の身体を触れば、確かに前と形が違う。
「奇跡的にマイクロチップは無事だったんだよ。ミーくんがパーツも全部集めてくれた。まあ、新しくボディは作っちゃったけど」
「ミーくんが」
「カオちゃん!」
走り寄って来たのは話が出たミーくんだ。よかったよかったとミーくんは手を握ったままぶんぶんと振って喜んだ。
「ミーくん、ありがとう」
「いいんだよ。カオちゃんが戻って来てくれたら」
ハッとするカオ。
「大変!また熱が!」
慌ててミーくんの手を振り払い、二人から距離を取るも、自分の身体に異変はない。ミーくんに触られてしまったら、熱暴走が起きると思ったのだが。
「新しいボディにしたって言ったでしょ、今度は冷蔵庫の一部を使ったんだ」
「それじゃあもう」
「熱暴走の心配もない。ワシのマッサージも洗濯も食事も睡眠も大丈夫だぞ!」
カオは自分の身体が普通になったのだと実感がわき、パアッと飛び上がって喜んだ。
「やったー!ミーくん!」
「わ!」
カオは喜びの勢いのまま、ミーくんに飛びついた。
「私ずっとミーくんにこうしてみたかったの!」
「わ、わ!」
バン!そんなすごい音をして、ミーくんは回路がショートした。今度はミーくんの熱が暴走してしまったなと、剛は笑っていた。