estrela

ベンチに座って、足をぶらぶら。
はやく来ないかなと待っている。

カミーユ〜!と遠くから声が聞こえ、そちらを向けば愛しい彼女の姿が。思わず、わああっと口をゆっくりと開けて喜んでしまう。
すかさずカミーユは動いた。


「ささ、こちらにサインを!」

「婚姻届じゃないそれ!いつも持ち歩いているの?」

届出はカミーユの挨拶みたいなものになっていた。

「カミーユったら」

「えっえへへ」

冗談だとカオはいつも受け流す。カミーユにとっては、冗談ではなく本気なのだ。いつかこの届出にサインをしてもらうと燃えている。

「今日は最近話題のたい焼きを食べに行くんだからはやく行かないと!」

「そ、そうだった。行くにゃ」

説明のような台詞を口にしながら、二人はたい焼き屋さんへと急いだ。そこにはすでに列ができている。

その列では、たい焼きを頭から食べるか、尻尾から食べるかを話題にしているカップルの背後になった。そこからこんな話が聞こえてきた。

「ねえしってる?ここのたい焼きにチューして食べると恋が叶うんだって!」
「俺たちには関係ねえな!ベイビー!」
「イヤン愛してる!」

どこの時代のカップルなんだろう。しかしカミーユは良いことを聞いたなと思っていた。もちろん、恋が実るのであればカオとよろしく…

「ふ、ふ、ふ…」

「カミーユ顔が怖くなってるよ」


*****

「買えてよかったね、売り切れちゃうかと思っていたけれど」

無事にたい焼きを手に入れたカオとカミーユは、公園のベンチに座ってさっそくいただくことにした。

そこでカミーユが見たものは、チューとたい焼きにキスして食べるカオの姿であった。

「そ、その食べ方は!」

「え!」

ワナワナとするカミーユに対して、カオは恥ずかしそうにうつむく。まさかカミーユがたい焼きの噂を知っているとは思っていなかったのだ。こんな迷信、試しているところはあまり人には見られたくないものである。

「知らないと思ってたのに…」

「風の噂で聞いたにゃー。それより!ま、ま、まさかカオは好きな人がいるのか!」

頷く。カミーユは重たい岩でも落とされたような気持ちになった。

「な、ないしょだよ!恥ずかしいから…」

「その…僕も同じことしようと思っていたから」

「カミーユ、恋とか…してるの?」

赤くなりながらカミーユは頷く。君に恋してる、だなんて洒落たことは言えそうもない。

「もし、もしもカミーユだったら、好きな人が別の人を好きだったなどうする?」

「カオ?」

「私の恋、叶いそうにないの。だから、カミーユだったらどうするのかなって」

もじもじとするカオに、カミーユは優しく微笑んだ。今まさに自分も、カオは別の好きな人がいるんだなと確信したところ、答えはすぐに出せた。

「好きな人が幸せでいてくれたら、僕はそれでいい。きっと好きな人が選んだ相手なら、悪い人じゃない。好きな人の幸せが、僕の幸せだ」

カオはうつむいていた顔を上げてカミーユを見た。カオから見たカミーユの顔は、それはとてもあたたかい感じがしたという。

「カミーユってすごいのね。私やっぱりカミーユを好きで間違えてなかった」

「お互い、恋が実ればいいのににゃ」

「神頼み!いや、たい焼き頼みしないとね!」

二人はにこにこと、たい焼きにチューしてたい焼きを食べた。




「なんでカミーユは気がつかないんだ?」

「あれが両片想いというやつか…やっかいだな」

草葉の陰から見ていたアムロたちは、絶対教えてやるもんかと誓いを立てた。
カミーユはカオを、カオはカミーユを好きだということを、カミーユもカオも知らない。