はまぐり
今日は静かな海だなんて思っていた。座っていられる時は、ほっとするどころか、ぼんやり、なにも考えないでいたりする。船ががゆりかごみたいだ。
そんな風に座っていると、ス、とすぐ隣にいたキラーの手が重なってきた。
あっと声を出して、赤くなる。するとマスクの下でどんな顔をしているのかわからないまま、キラーは口を開いた。
「うぶだな、カオは」
またそう言われることで、顔に熱が集まった。
「良いなカオの手は。すべすべしている」
「誰と比べているんですか」
「決まった誰かとは思っていない。女の手だなと思っているだけだ」
キラーの手はゴツゴツしていた。かたくて、大きい。指が長いのに、手のひらも広かった。
「カオ、触られるのは嫌いか?」
「嫌いじゃない、です」
「そうか」
少し絡めてくる指。骨の感じが、よくわかった。
「惜しいな、マスクをしていては」
キスもできない、とキラーは言う。
もう顔も熱いし、心臓の動きが速すぎる。
「オイ、俺の前でいちゃつくんじゃねえ」
「キッド」
あやしい雰囲気になってきたところで、とうとう口を出したのはキッドだ。
「他所でやれ他所で」
「見せてやろうと思ったのにな」
「何考えてんだ」
何を見せつけるつもりだったのか。
キラーの手が離れる。するとまた、手が重なってきた時のように、あっと声を出してしまった。見透かしたように、キラーは笑った。
「惜しいと思うか?」
ええ、とても。