「うわ」

そのあまりに女らしくもない声にサーティーンはギョッとした。

「どうした」

「サーティーン、いい匂いするね」

すんすんと鼻を近づけてくるカオに、サーティーンはチョイチョイと手を振り、離れるように仕草する。

「何かつけてるの?」

「いいやなにも」

「お花みたいな匂いがするよ。おじさんなのに」

おじさんという言葉に、コラっと軽く指でカオの頭を叩く。叩くというより、撫でられているような感じであった。力は入っていない。

「オイルじゃねえか?」

「特別なオイルなの?」

「いいや、普通のオイルだ」

サーティーンはクツクツと笑った。そんな良い香りのオイルがあるものなら、飲んではみたいものだが。

「じゃあこれはサーティーンの匂い…もしかしてフェロモン…」

サーティーンは吹き出して笑った。
何を言いはじめるかわからないカオには、よくこうやって笑わせられる。

「アイアンリーガーにそんな匂いあるわけないだろ」

「わからないじゃない!好きな人からは好きな匂いがするものだってテレビでも言ってた!」

「そうかそうか」

またサーティーンはクツクツと笑うと、カオの頭をポンポンと撫でた。

「サーティーンも私から何か匂いがしたりしないの?」

「するぞ。粉物の匂いが。たこ焼き食って来たろ」

「えっ!におう?」

いつもと違う匂いがしたからこそ気がついたのだが、それを言わないのがサーティーンの意地の悪いところである。

「どんな匂いが好きなの?教えてよ!その匂いにしてくるから!」

「普通でいいんだよ、普通で」

「食べ物は嫌よ!」

お前はいい匂いだよ。
それを伝えられたのは、すっかりカオがこの話を忘れた頃である。