傍観者と二人三脚
でたらめに抱きついてみた。
キッドのモサモサとした上着がかゆい。キッドに抱きついているんだか、上着に抱きついているんだか。抱きついた感じは、硬くて、あたたかい。キッドの上着がまた痒さを誘った。
「おー」
「キッド、キラーさん知らない?」
「知らねえ、どっかにはいんだろ。テメーは誰の許可を得てンなことしてんだ」
「キラーさんはいいよって言ってた」
キラーめ。そんなポツリとした言葉の吐き捨ては、潮風に消えていった。
「ねえキッド、まだ先は長いんでしょう。話し相手くらいになってよ」
「おめえの話は長えんだよ」
「でも先は長いからね」
「だー、わかった聞いてやるよ」
抱きついたそのままに移動をする。いっちに、いっちに、と二人三脚のように進む二人。コーヒーでもいれて、おやつを食べながら話そう。長い話を。終わりは作らないのだ、ずっと聞いていて欲しいから。
「このコーヒーいい匂いで、おいしいでしょ」
「すぐにでてきたぞ、誰が煎れてんだよ」
「ナイショ」
そんなやり取りをしながらティータイムをする二人を、次のおやつを用意するキラーはおだやかな表情で見守るのだ。