まずは君から


「キラーさんは、なにが、好きなのですか」

「あ?」

元奴隷のカオは正座をしながら、キッドに問うた。服をギュッと握りしめて、目を合わせない。泳いでいる。顔は朱を注がれて、わかりやすい。

「キラーが好きなのは女だ」

そんな嘘を言うと、ビクリとカオはふるえて、何かをこらえている。自分の立場をよくわかっているからこそ、その答えはあまりにも辛い答えだったろう。
カオは捨てられたところをキラーが拾ってきた。捨てられた理由は、どうやら病。毒の入ったツボにわざわざ手を突っ込む奴はいない、つまりそういうことだ。

「女なんてぇのは嘘だ。キラーはおまえを気に入ってる。何でも喜ぶぞ、面白いくらいに」

「そうでしょうか、私はできたら、役に立ちたい」

そうやって強く願うカオ。その視線は本気である。
キッドは案外優しいところがあった。役に立たないとは言うが、キラーのためになるのならばと動いた。

「治せるか、じゃない。治してもらえるかだ」

ハートの海賊団のローは言い放つ。ローのことは気に食わなかったが、ローの能力によって、カオを健康体にして欲しいと、わざわざ来たのだ。

「どこが悪いとは聞かねえ、俺に徳があるのか」

「おめえの損得なんか知るか。だが治せ。それとも治さねえのかヤブ野郎」

ただならぬ雰囲気に、ハートの海賊団の船員たちに緊張が走る。船長同士の争いになると、自分たちもただでは済まない。

「キャプテン…わたし治してもらわなくても…」

「黙ってろ。誰のためにこんな寄り道してると思ってんだ」



*****

「キッド、どこで道草を食っていたんだ」

「説教はごめんだ。それよりキラーは俺に頭を下げて欲しいくらいだぜ」

どうしてそんなに偉そうにできるんだとキラーはため息を大きくひとつ。
それから、キッドの背後から、おずおずと顔を出すカオに、ホッと安心をする。

「カオもキッドとどこへ行っていたんだ」

「すみません、キッドさんとハートの海賊団のところへ」

「乗り込んだのか?どうしてそんな危ないことを」

キッドはキラーに耳打ちする、それはあまりにも奇跡。

「カオはもう健康だ」

そして察する、ハートの海賊団でやってきたこと。

キラーはキッドを抱き締めて、笑った。それはそれは大きな声で。これはキラーにとって嬉しいことであり、幸せであり、最高の贈り物であった。

好きな人の健康程、嬉しいものはない。