適性がない
「蜻蛉切さん!蜻蛉切さん!」
「はい、ここに」
「蜻蛉切さんは居るだけで癒してくれるから好き」
そんな会話を横で聞く、御手杵。蜻蛉切の胸の中はそんなに良いのかと疑問に思う程の抱擁。
「俺ではダメなのか」
「御手杵では癒されない」
それは一刀両断。刀よりもよく切れる言葉で、主は御手杵をあしらった。どうしてか今日も、自分には厳しい主に遠い目をする。
明くる日、蜻蛉切は遠征へと向かった。自分はといえば、特になく留守番。畑も馬もブーたれるからと言われた。それなら手合わせさせてくれ。
ぶらぶらと歩いていれば、主が酷く疲れた顔をさせて縁側に座っているのが見えた。辛気臭いそれは、嫌でも目につくだろう。
「なんでそんなしょぼくれてんだ」
「最近忙しかったから」
「おお!なら俺がアレしてやるよ!」
やっと俺の出番ってわけだ!と御手杵は主を蜻蛉切がやっていたように抱擁、がっちりホールドする。
御手杵としては、同じ槍だし、他の刀たちはいねえし、と自分がやるべき時だと思ったのかもしれない。主は蜻蛉切のこれで疲れがとれていたのも聞いたことがある。
ただ、結果は最悪で、御手杵は刃を鍛れた時よりも良い音を鳴らして平手打ちを食らった。