適材適所の恋人ごっこ

キャプテンがいない今、指揮をとるのはだいたいペンギンかシャチである。

「今日のおつかい隊長はおれ!」

そして各隊長もペンギンかシャチである。本日外れクジのシャチは、重いものたっぷりの買い出し隊長であった。隊長というか、なんというか、そうやっておだてないと皆やってられないのだ。

「ベポは荷物持ちな」

「アイアイ!」

私も言っていい?とカオが顔を出す。それまで嫌な仕事にシャチは膨れっ面をしていたが、途端にシャキ!としてしまう。膨れっ面もかわいくねーが、真面目な顔もかわいくねーぞとペンギンがチャチャを入れる声がした。

「カオも一緒か!おれ、いっぱい持つよ!」

「ありがとうベポ。ベポは頼もしいね」

「えへへ」

シャチはそんな会話を耳にすると、自分も「シャチは頼もしいね」と言われたかのように脳内変換をした。言われてえー。
そんな妄想をしていると、いつの間にかベポはカオと手を繋いでいるし、羨ましいかぎりであった。

「人が多くても、こうしてるとはぐれないんだよな!」

無邪気に笑ってベポは話している。かわいこぶるな。まあでもベポは人間には興味が無いので、許してやろう。

買い出しはそんな感じで、ベポとカオが仲睦まじく過ごしていた。


「腹減ったなー。なんか買い食いして帰ろうぜ」

「おれ!うめーやつ!なんでも!」

「わたし、甘いもの!なんでもいい!」

シャチにベポが飛びつき、そのベポにカオが飛びついた。逆だー!逆になれ!シャチは重量たっぷりのベポを受けながら心で叫ぶ。

「奢ってやるから騒がない!」

ベポを剥がしながら一喝。

「やったー!シャチ大好きだ!」

「わ、わたしも好き!」

ドスドスドスと弓で打ち込まれたかのような衝撃的発言だった。やはりベポ様様。ベポに合わせて言ったであろう、好きというワードはシャチを昂らせた。

久しぶりに食べたいとクレープを食べ、さあて帰り道。重たい荷物とのひと勝負だと、荷物を持とうとしたシャチは、荷物をベポに奪われた。

「奢ってもらったから!おれが持つよ、シャチありがとう!」

ベポは腹がいっぱいになって、いつもより力が出ると言ってニコニコとしていた。

「なんかかえって悪いなベポ」

「んーじゃあシャチはカオの手持ってあげて!人増えたし、おれの手ふさがってるし!」

ベポ様。ベポ大明神様。あなたが神か。

「と、いうこと、らしいけど…おれが持ってもいいのか?」

おずおずと尋ねてみれば、カオは手を出した。

「お願いできますか…」

そう言いながら、真っ赤になって。
キュン。おれがお願いしますだよ。

初めて握ったカオの手は、柔らかくて。俺の手は汗ばむし、ゴツゴツしていて嫌だったかもしれない。

ベポにはしばらく足を向けて眠れない。