まっしろ

キラーは一驚を喫する。
用事を済ませて、カオを探したのだが、まったくどうしてこんなことに。

カオが誰かと話している。
店の窓から、それが見えた。店のものか、それとも知り合いか。いや、知り合いはいないだろう。

黒足の姿が見えた時、キラーは背筋が凍った。

店に一歩踏み入れれば、あまりの殺気に店の男は「ヒッ」と声をもらした。キラーは少し離れて、二人を見て聞き耳をたてていたが、聞こえてくる黒足の言葉はどう解釈をしても口説いているような、ナンパをしているようなものでしかない。

何をおとなしく聞いているんだカオは、とキラーはワナワナとした。

黒足がカオの手を握りはじめた時、キラーの中で何かが切れてしまったらしい。足音重く、カオの背後に迫った。

「キラーさん!」と振り向いたカオの顔は、どこか嬉しそうであった。しかし、それよりもキラーは心穏やかではなかったために気がつかない。

また、黒足が馴れ馴れしく「カオちゃん」などと呼ぶものだから、キラーは目角を立てる。
その殺気たるや、やはり伝わったのだろうか。あまり良い顔を黒足はしなかった。

黒足が去った後、キラーは心をザワザワと騒がせていた。
カオは黒足に好意を持っただろうか。確か、黒足は荷物を持ってやっていた。あれは、やはり嬉しいものだろうか。

しかし自分が同じことをすれば、「荷は持ちます」と断られた。正直に言うならば、これは少し落ち込んだ。

しかし手を持てと、言われた。

キラーは、自分はこんなことで緊張して照れるウブなのかと自分に驚いた。
張り切り持った荷物は不思議と重たくなかった。それよりもあたたかい手が嬉しい。

「キラーさん、私は料理を覚えたい」

「今でもやってるだろう」

「誰かのために作る料理は知りません」

「キッドはなんだって食うぞ」

「いいえ、キラーさんに作りたい」

そう言うとキャプテンは怒るでしょうか、と慌てるカオがかわいらしい。
ぽーっとカオを見てしまった。キラーはマスクをしているとことが多々有り難く思うことがあった。こんなだらしない顔を見られてはならない。

「楽しみだ」

絞り出た返事は一言だが、カオは嬉しくパッと笑う。

「やはり麺が良いでしょうか!キラーさん、何が好きなのでしょう」

「カオ…」

「はい!」

「カオだ」

「はい?」

キラーが好きなものは、今日は伝わらないだろう。