並べてウサギ
「舐めたら治ります!」
「舐めるな!」
そんな二人の攻防戦の声はよく響いた。
やれやれと周りは放っておいたが、バタバタと騒がしさは増すばかり。
「ドレークさん、舐めたら、唾液つけると早く治るって言うじゃないですか!私が舐めてあげますよ!」
「馬鹿も休み休み言え!そして休め!薬の方が効果がある!やめろ、こら離せ!」
攻防戦はこういった感じで、舐める舐めないだと側から聞いていれば怪しい会話である。
怪我をしたらしいドレークの姿を見たカオはずっとこの調子で、ドレークさんの役に立つのだとわあわあと騒ぎ立てていた。
「ドレークさん!怪我のせいできっと食事も取れませんよね!わたしが口移しします!」
「おれが怪我してるのは足だ!関係ない!」
バッタンバッタンと騒ぎは続いた。そんなに元気なら大丈夫なのだが、カオはドレークから離れなかった。あげく疲れて、二人共が夕方にはグッタリ。
「ドレークさんの意固地」
「それはこっちのセリフだ。お前はどうしてそんなに頑固なんだ」
冬が近いというのに汗をかいた。ハアハアと息があがる。問いながらドレークはカオの方へ顔を向けた。
「ドレークさんが好きだからですよ」
「ばか。それなら言うことを聞くもんだ」
わしゃわしゃとカオの頭をドレークは撫でた。気持ちがよかった。大きな手が好きだった。カオは、力の加減もわからないドレークの不器用さもたまらなく好きで、武器のおかげでできた豆のできたような硬い指も好きだ。
好きなだけなのに涙が出た。
「ああまったく、カオは泣き虫だな」
「ドレークさんがね、泣かせる名人なんです」
「泣かせてるつもりは無いんだが」
リップ音が、ちゅ、と鳴る。
ドレークがカオの額にキスをした。
また涙が出た。ぽろんぽろんと大きな粒が交互に頬を走る。
「ドレークさん」
「なんだ」
「わたしにできることはありませんか」
「最初からそう聞けばいい」
りんごを剥いてくれないか、とドレークは少し照れて言った。