湯気と共に去りぬ

「職務中です!」

どうにかならないんですか!と机を叩いた。コビーというその少年は、ムスッとした顔を向ける。そんな感情的になるなんて、彼らしくはなかったが、致し方なかったのだ。

「おれに怒るな。カオが勝手に」

そうなだめるドレークの膝には、カオが座り、ドレークの首に手を回してべったりとくっついていた。

「いくらドレークさんでも、目の毒と言いますか、目のやり場に困ると言いましょうか」

コビーはチラチラと2人を見ながら話した。

「ドレークさんが、連れて来てくれた!嬉しい!」

「だから今回は特別だと言っているだろう」

カオはどうやら、ドレークと関わりがあると目をつけられてしまったらしい。危ない目に合わせるわけにはいかず、仕方なく連れて来たのだが、ずっとドレークから離れようとしなかった。

「ドレークさん、今日はドレークさんの部屋に泊まるんですか?」

「馬鹿!部屋は別だ!」

「そんな…さみしくて死んじゃう!」

コビーは、はあ、とため息をひとつ。
こんな痴話喧嘩、いちゃつきぶりを見せられる自分は一体なんなのか。それにここにはいつもの堅苦しい雰囲気は無い。

「コビー!カオを連れて行け!いうことを聞かないと噛みちぎると言い聞かせておくんだ!」

「ドレークさん!そんな!ドレークさん!」

大騒ぎして引き剥がされたカオは、しぶしぶとコビーに連れられて別室へと移された。

「せっかくドレークさんの近くに来られたのに」

「近すぎですよ。まったく、なんだってあんな迷惑をかけるんですか」

「迷惑をかけないと、ドレークさんは振り向いてくれないの。子どものようにしておかないとね、目をやってくれないのよ」

そんなワガママなことを、とコビーは思ったが、あの堅物なドレークを振り向かせるためならば、そんな作戦も必要なのかもしれないとも考えた。

「ドレークさんに、怪我させないでね」

「させるものですか。それに、あの人は強いですよ」

「強くても」

「大丈夫ですよ。守るべきものがある人だから、ドレークさんは」

カオは頷く。ドレークはいろんなものを背負っているのだとカオは思ったから。
すっかり静かになったカオを置いて、コビーは仕事に戻ろうと部屋を出た。


「ドレークさんも、人に頼んでおいて盗み聞きですか」

陰にドレークを見つけると、そう声をかける。

「な、別にそんなことはしていない」

「バレバレですよ。そんなに気になるなら、やっぱり隣にいてもらえば良いのに。呼んできましょうか?」

「余計なお世話だ」

2人で元居た部屋へと戻る。
聞きたいことも聞かないままに、コビーはドレークがペンを走らせる姿を目に焼き付けていた。

「ぼくも守るべき人が欲しいです」

なんて口走れば、少し赤くなりながら、なんの話だとドレークはとぼけた。