回文書サイン

カオがラブレターをもらった。
そんな噂を耳にする。

ドレークはいつものようにすましていたが、内心、気になっていた。

どこぞの海兵だろうか。それとも街の人だろうか、それともどこかの貴族。
モンモンと考えても仕方がないのだが、確かめる術がない。渡した相手が部下だったなら、少し話を聞けるのだが。

「ドレークさん!わたし!ラブレターもらった!」

「うわ!」

勢いよく部屋に飛び込んできたカオは、先程までのドレークの悩みなんか知る由も無くラブレターを持ち込んできた。

「ドレークさん!ほら!」

「見せにくるやつがあるか!」

「だって!これはドレークさんがヤキモチ妬いてしまうに違いないと思って!ほらほら!」

「失礼な奴だ…相手の身にもなってみろ」

ひっくり返したコーヒーカップを元に戻すと、ドレークは書類を整えた。

「会って来ますね」

「好きにしろ。おれに報告するな」

ラブレターを握りしめて、見つめては見るがドレークはやはりすまし顔。

「かっこよかったら、付き合っちゃうかも」

「好きにしろと言っている」

あっかんべーとしながら、カオは出て行った。
嵐のようなこの珍事を部屋の端で見ていたコビーはクスクス笑った。

「素直じゃないですね」

「何がだ」

「心配で仕方がないんでしょう」

にこにことしながら、コビーが新聞を渡すとドレークはわざと顔を隠すように広げた。

「どうしておれが心配するんだ。カオが誰に好かれようが付き合おうが知ったことでは…」

「新聞、逆さですよ」

「ウグ…」




******

「帰って来ましたよ、ドレークさん!」

「なんだ帰って来たのか」

5杯目のコーヒーを飲むドレークは、目を合わさずにすまし顔をしていた。コビーも変わらず、クスクスと笑っている。

「やっぱりドレークさんの方がかっこいいので」

「おれはそういうつもりはない」

「ドレークさんにそのつもりはなくても、わたしはずっとドレークさんが好きですよ」

「うるさいやつだ。資料を見てるんだ、静かにしろ」

「ドレークさん…」

それ逆さですよ、とコビーが耳打ちする。資料を元に戻すと大げさに咳払いをするドレークに、カオはえへえへと笑うのだった。