貯蓄からの味
ヘルメッポ曰く、あいつはわかりやすく、見てるこっちが恥ずかしくなる、鈍感で、鬱陶しいらしい。
給仕のカオが渡したタオルを受け取ろうとして、カオの手にコビーの手が触れた。
「ああ!ああすみません!別に、決してわざとでは!以後気をつけます!あの!本当に、ほんとーにすみません!」
「そんな、気にしないでください!」
こんなことが、何度あったことか。
「コビーおまえ、カオのこと好きだろ」
「な、ど、どどどどうしてわかったんです!」
誰でもわかる、と戦友は言い放った。
コビーは、バレていないと思っていたのか、真っ赤になった。
闘い方も、体格も、全てが変わったコビーだが、どうにも恋愛沙汰には疎く弱いらしい。
どうしたらいいのか、こんなことをガープやドレークに相談するわけにもいかず、1人悩ましいコビー。
ふらふらといつの間にやら炊事場へ。こんなところへ来ても仕方がない、そう思って帰ろうとしたところだった。
「難しい顔をしていますね」
「わわ!」
カオがひょっこりと現れたものだから、コビーは飛び上がった。
「お食事で?」
「いや、少し考えごとをしていたら、なんとなくふらふらとここへ…」
頭を掻く。こんなぼんやりとしたところ、かっこ悪いなと思った。
「いちご、好きですか」
「え、はい。好きです」
「よかったら」
ストン、と手のひらに落とされたのは赤いいちご。時期物ではないはずだがと不思議に思っていたが、カオは説明はじめた。
「いつでも季節に関係なく野菜が育てられるように実験をしているのだと、いっぱい頂いたんです」
「どうりで。珍しいと思いました」
一口かじると、甘く、酸っぱく、春の味がした。
「貰ったと、他では話さないでくださいね」
「もしかして、これはつまみ食いですか」
「味見、です」
「ふふ。覚えておきましょう」
いちごを3つ食べると、これは食べ過ぎたとカオは笑った。彼女と普通に話しているじゃないか、とコビーが思ったのは2つ目のいちごの時だった。
「次はブドウが来るらしいですよ」
「おや。味見しなくてはいけませんね」
「まったく、その通りですね」
炊事場のこの秘密は、しばらく続く。
もう少し仲良くなれたら、自分の秘密を明かそうと思う。あなたが好きですよ、なんて、まだ言える口ではなかった。コビーは食べたものの味を毎晩思い出しながら、ああ好きだと笑うのだ。