焦眉の急

「ん。キラーさん」

「なんだ」

腕の中で擦り寄るカオに、優しく応える。

「あたたかいです」

「そうか。なら、よかった」

ぷうぷうと眠るカオ。
さて、ひとつの布団に寝ている2人だが。

「これじゃあ蛇の生殺しだ」

キラーはへの字で、思わず涙ぐむ。
寝ている、本当に寝ているだけなのだ。ナニか、があったわけではない。

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『最近とても寒いですね』

『そうだな。カオ、一緒に寝るか。あたたまるぞ』

『良いんですか!はい、じゃあ今晩!』


これが今日の朝にされた会話だ。キラーは冗談で言ったことなのだが、まさか承諾を得られるとは思っていなかった。
淡い期待をしながら1日を過ごし、いざ就寝の時間。カオは本当に寝るだけであった。そんなわけはないとキラーは抱きしめてみたが、カオは、わあ本当にあたたかいと喜ぶだけだった。

信頼してもらえていることを喜ぶべきなのか、男として見られていないことを悲しむべきなのか。

ン、と甘く声を出しながら胸に収まっている女が拷問に思える。
無理矢理やることをやってしまうのも手だが、そんなことをして良いのだろうか。
手を上げたり下げたりしながら試行錯誤するキラー。

結果、一睡もできず夜が明けた。
キラーは、ベッドに腰掛けて大きなため息をついた。自分はヘタレなのだろうなとうなだれながら。

「キラーさん、寝られなかったんですか」

「あ、ああ。少し考えることがあってな」

同じベッドの上、座っていたカオは心配の声をかける。少し寝癖がついている頭が、また油断していることを表していた。

「すみません、私、やはり邪魔でしたか」

「いいや邪魔じゃない。その、俺も…あたたかかったさ」

キラーの背中にまたピタリとカオは身体を当てた。びくり、と肩をはねさせた。カオはキラーの背中に耳を当て、鼓に集中する。

「トクトクしてます。とてもはやく」

「そうだろうな。カオと、床にいるんだぞ」

ガバ!と背中から離れたカオを頬杖をついて、キラーは見た。カオは赤くなる。

「もしかして、私はあさはかでしたか」

「カオらしいさ。少し期待はしていたが」

「あ…」

目を泳がせて、カオは万感こもごも至る。

「い、今からでも」

おずおずとカオは口を開くが、それを見てキラーは笑う。

「くちだけ、もらおうか」

そう、ズイと身を乗り出して、キラーは口づけた。

キラーはそうは言っておきながらも、口づけだけで終わるのがとても惜しい程、カオは愛しい顔に見えた。

リップ音は耳に残り、呪いのように離れない一日となる。