内開き式
化けて出てもよかった。
それくらい好きで、離れたくもなかった。あと100年生きてね、なんて冗談も言っていた。どうしてか信じられなかった死も、いざ顔を見れば実感した。
ずっとわんわんと泣いた。
その夜は不思議と落ち着いて、寝た。
トントン、トントン。ガチャ。
扉が開く音で目が覚めたのは、真夜中の深い闇で。心臓はバクバクとしながら、誰が来たのか、目をハッキリと開けていいのか、考えた。こわい。
もしかして本当に化けて出たのだろうか、それとも泥棒か。泥棒ならこわすぎる。
泥棒、は近づいて来るようで、音が近くなる。クシャリ、と布団を触られた。布団カバーは固く、あまり好きではなかったから、こんな泥棒に触られたのなら捨ててしまおう。
いや、それよりもそんな、近くまで来ている泥棒。どうしたらいい、どうしよう。
「女…?」
声が聞こえた。低い男の声。
今日亡くなった大事な人は女だから、これは確実に泥棒だと思った。
「おい、すまん。ここはどこだ。おれはどこへ来た」
浮浪者か、それとも、酔っ払いか、それとも、それとも。
「おい」
こわい。こわい。
「おい」
とてもこわい。
「おーい」
フーと風が来た。思わず、ビクリとする。男が息を当てたらしい。
「起きてるんじゃないか。起きてくれないか。おにいさん困ってるんだよ。なあ、おーい」
もうこれは限界だと恐る恐ると目を開けてゆく。
そこにいたのは、ピエロのようにメイクをした、金髪の男だった。
それがどれだけ怖かったことか!
真夜中、目の前にピエロ、見知らぬ人間、目覚めて早々に!
カオはそのまま気を失ってしまった。