胸部


「またか」

目覚めの時、ベッドが狭くどうもまた生命体が潜り込んでいるのだろうとわかった。スヤスヤと眠ることを楽しんでいるようだ。この生命体について調べてみたところ、形がないものは捕まえようがないし実態がわからないこともあって破格の懸賞金がかけられていた。それは多分、捕まえることなんて不可能だし、それがその生命体だと証明の仕様がないからだ。もしおれがこいつをそうだと言って渡したところで、難癖つけられるだけだろう。

頭を撫でてやれば、ゆっくりと目を開けるそいつに「起きたか」と声を掛ける。

「ディン、わたしは欠陥かしら」
「どうしてそう思う」
「わたしはディンが理想とするママになったはずなのに、なれていない」
「人ってのは難しい。心があるからな」

心臓のことかと生命体はおれの胸を触った。

「見た目でどうこうするなら、おれはグローグーを弟子にはしていない」
「わたしは……」
「なれるかどうかはあんた次第だ」

我らの道。生命体は小さく頷いた。

「あんた名前は無いのか?」
「ない、と思う」
「おれが考えておこう」