11月22日
カレンダーの月日なんて、普段気にしないのだが。
先程の商人から、今日はいい夫婦の日だなんて小さな情報を得たらしいヒートはカオと話していた。
「いい夫婦の日…」
物資の整理をする手を止め、カオはヒートを真っ直ぐ見る。
「語呂合わせらしい。どこかの国のな」
「では、特別になにかお祭りがあるわけではないのでしょうか。いい夫婦の日…」
「祭りや祝いの日ではない、そうやってただ商人は何か理由をつけて売りたいのさ」
くつくつと笑うヒート。カオは理由はともかくとして、いい日だと目を輝かせていた。
ヒートはこの目を知っている。何かを閃いたり企んだりする時の目だ。カオは仕事をひと段落させると、すぐに意中の人のところへと向かっていた。
「キラーさん!」
「カオ。ちょうどよかった、キッドが海図を組むのを手伝えと」
「はい、すぐに。じゃなくて、キラーさん!今日は!」
「そうだ今日は鉄の仕入れ日!逃すとキッドが煩いからな。古い分は磨いておけだと」
「そうでした、船の補強も予定しています。キャプテンも何か新しい武具を作ると話していました。いやだからそうじゃなくて!」
キラーは、ハテ…?とカオが何かを焦っている理由がわからない。
「今日は!ええと…その、なんでもなくて…すみません」
「終わらなければ言え、おれも後で行く」
忙しそうに去っていくキラーを見送ると、カオは近くの樽に腰かけた。
夫婦の日だから仲良くしましょう!だなんて、いきなり伝えて、それからどうしたものか。
ぼんやり考え込んでいると、どうなっただろうかと様子を見に来たヒートと、また会話が始まる。
「夫婦ってなんでしょう…」
「その様子じゃ、うまくいかなかったようだなあ」
「キラーさんと仲良くする口実になるかと思ったんですが、切り出せませんでした」
「キラーの旦那はいい夫婦の日なんて知らないだろうが、お嬢が言えば何でも喜んでよろしくすると思うぞ」
「えへへ、夫婦のごっこ遊びでもできたら良いんですが」
「ごっこで済むとは思えんがな…」
*****
「キッド……」
「なんだシケタ面して」
「カオがヒートと、夫婦がどうのと話していた…よくは聞こえなかったが…」
また始まった、キラーの心配性が。
こうなればキッドは話半分くらいにしか聞かない。お母さんかと思うほどに細かいことを心配するのだ、キラーときたら。
「見聞色でも極めるんだな」
「カオにはうまく扱えないんだ。どうも弱い」
「その方が良いぞ。ストーカーになりかねねえから」
「な!カオとおれは、両思いだ!」
エヘンといばるキラーをあしらうキッド。
「へえへえ、勝手に夫婦でも親子でも兄弟でもやってろ」
「妬いてるのか、キッド」
「殴るぞ色ボケマスク」
今日もまた、たわいない時間が過ぎていった。海は広くて長い。