ヒート誕生日
キッドは興味がなさそうだった。ワイヤーももちろん、どうでもいいと言った。
「あと頼れるのはキラーさんだけなんです」
正直なところ、キラーもどうでもいいと言いたかった。だがカオに言われると断れずに良い顔をしてしまった。
カオは今日がヒートの誕生日だと知ったらしい。
「誕生日を祝えるなんて…幸せで。わたしはお祝いごとってしたことが無くて」
初めてを経験するカオは微笑ましいが、その相手が別の男なのは気にくわない。なぜ自分はヒートより誕生日が後なのだと憎くなった。やはりおれもパスだと断ろうとキラーはカオを見た。
「キラーさんも料理を作るの手伝ってくださいね。わたし、キラーさんのゴハン大好き!」
「よし任せろ」
がし!と手を握って承諾する。惚れた弱みか、調子が良いのか。こうしてキラーはカオと料理を作ることになる。
ケーキのレシピを前に貰ったのだと見せてきたり、旬のフルーツはこれだと言ってきたり。カオは前々からこういった祝い事をしたかったようだ。
キッドは酒を呑むのなり飯を食うなりの贅を尽くすことは好きだったが、パーティーなんて柄では無いし、平和ボケすると言って華やかなことはしなかった。
「キラーさんケーキも作れるんですね、すごい、クリームがこんなに綺麗に」
もりもりとケーキを飾り付けてゆくキラーを隣で観察するカオは子どものように目を輝かせていた。
「まあな。こういうのを食うのが好きなのがひとりいるから、覚えさせられた」
「ドルヤナイカちゃん!」
「ち、違う!」
なんだ違うのかとまたケーキに目を移すカオ。咳払いをして、また手を動かすキラー。部屋にはまだ、ケーキを焼いた匂いがいっぱい。その匂いは、外は外へと流れて、ひとりを誘惑してきた。
「おい、またなに作ってんだ」
「やっぱり来たかキッド」
キラーは来るのがわかっていたかのように落ち着いていた。どうやらキラーが言っていたひとり、というのはキッドのことらしい。
これはヒートのケーキだと説明する前に、キッドはヒョイパクとケーキを食った。
「キャプテン!」
「なんだよ。毒でも入ってんのか」
「か、勝手に食べましたね!なんで、せっかく作ったのに…キャプテン、キャプテンのばか!」
カオはキッドに言葉をぶつけた。反発。カオの初めての抵抗だった。キッドは痛くも痒くもない言葉に、なにがどうしたという顔をしている。
とりあえず、カオが “ばか” と言ったことも初めてのことであるし、泣きべそをかいてるようなようなカオの頭をガシガシ撫でて軽く押さえつけた。
「キッド、今日のケーキはまずかったな」
「ああ?うまかったぞ」
「違う、キッドが食べるべきケーキじゃなかったんだ」
その後、キッドは強制的に、強引に、ケーキの作り直しを手伝わされることになる。
「おれにこんなことさせやがって、おれの誕生日はこれの10倍はデカイやつ作れよな」
「もともとお前が食ったのが原因だろう!それにこの次はおれだったはずなのに…どうしてキッドがまた先に誕生日なんだ!」
急にどうしたことか誕生日のケーキをもらったヒートがいちばん困惑する、誕生日になった。