モブ視点のはなし
モブです。自我があるモブです、名前はまだない。
キッド海賊団、もっとこう名前は無いのか?と思いながらも船に乗って、キャプテンを信じて海賊をしているオレ。
「少ししみます」
オレは今怪我をして、カオちゃんに手当てを受けているところ。消毒はたしかにしみた。どうしてか、戦ってるときは痛いことも我慢できるのに、消毒はイテテと声が出る。
「はい、終わりましたよ」
「ありがとう、助かったよ」
「いいえ。次は怪我がないと良いですね」
パッと笑うカオちゃん。思わずデレーとしてしまうくらいには癒やし。前までは男だらけだったこの船にもこんな癒やしができるだなんて、生きてりゃ良いことあるんだな。
ハッ!
しかし、カオちゃんのずいぶん後ろでものすごく怖い顔(顔は見えないがきっと怖い顔)をしている男が一人。
この船の2番手のキラーさんだ。正直ものすごくゴリラよりゴリラって思う程に腕っぷしも強いし、無駄にゴリゴリしている。マスクの下の顔は同じ船に乗っているオレも知らない。
この怖い顔のゴリラ…キラーさんはどう見ても怪我をしてはいないし、カオちゃんの見張りだろうと思う。
だって噂じゃカオちゃんとキラーさんはデキてるらしい。そもそもカオちゃんを拾ってきたのはこの人で、よく世話をしてた。
オレならぜったいゴリラじゃなくてキャプテンに走るけどな。
その次の日の昼、カオちゃんがキラーさんと話してるところを見かけた。
オレの前とは違う顔をしていた。オレはあんなにはにかんでいるカオちゃんを知らない。ああ本当なんだなと思った。
「カオちゃんって副キャプテン好き?」
そう聞けば真っ赤になって慌てていた。うわなにそれかわいい。
「な、ナイショにしてくださいね」
まったくけしからんカオちゃんはそうやってモジモジしていた。
「顔もわからないのにどうして好きに」
「キラーさん、時々マスク取ってくれますよ。とっても鼻が高くて、フフ、よく気持ちが顔にでちゃうんですよ。本人は気がついていないかも」
衝撃的な発言に、目をパチクリ。
キャプテンくらいしか素顔を知らないはずなのに、どれだけ気を許しているんだあのゴリラ副隊長。
悲しい気持ちで、立ち去るカオちゃんを見送らせてもらった。
今日はヤケ酒を飲もうっと。