ボクの憧れさ
「釣れませんねえ」
「キラーが泳いで獲ってこい」
「そもそも魚がいないんじゃあないのか」
空は晴れて、釣りにはあまり良くない日だった。こんなに晴れることもないだろうに。
今この船は食糧難だ。
人がいる島も、食べられそうな食物がなっている島もしばらくなかった。海は海王類が不思議とおらず、稚魚のような小さな魚がたまに海で光る程度。
とりあえず、ということで釣り糸を垂らしているが、かかる様子は全然なかった。
「次の島に文明があると良いですね」
「無くても食えるもんが居たらいい。ウサギでもイノシシでもヘビでも」
ふわふわと語るキッドの腹の虫がわめく。
そんな腹の虫合唱団となったキッド海賊団だったが、願い叶って文明ある島へたどり着いた。上陸すれば、酒場だ!飯屋だ!と皆一目散に食べ物めがけてすっ飛んで行く。
材料を買って船で作ってられるか!という気持ちは皆一緒、キラーも酒場に行こうと船を降りようとしていた。そこで、ソワソワとしているカオが目についたため、声をかける。
「キラーさんはどちらへ食べに出られるんですか」
「酒場だ。どこかにはあるだろう」
「酒場、ですか、それなら一緒に行けません…わたしはお酒が合いませんでしたから」
昔カオは酒を飲んで倒れたことはあるが、あれはとんでもない度数の酒であっただけであり、カオが弱いわけではないと思うのだが。
「酒場はやめた、一緒に行こう」
酒はいつでも飲める。カオと居る方がよっぽど気持ちが良くなれるのだ。
「キラーさんと一緒に!」
先程まで、残念そうな顔をしていたカオも今笑顔が戻る。嬉しくなったカオはキラーの手を取って目を輝かせた。
「マスクつけて行きますか?食べやすいところが良いですよね。やはりパスタでしょうか!」
「え、アー、それは」
誰も居なくなったしマスクを取って行くかと考えていたキラーだが、思わずニギニギとされる手に照れてしまった顔を見られたくは無い。マスクはつけて行こうと思った。そうなると食べられるものはかなり制限されてしまう。
せっかく外食をして、デートまがいのことができるというのに自分ときたらマスクマンなのだなと少し残念。
どうせ行くなら誰にも邪魔されない所へ…君の方が綺麗だよ、なんて言えるような場所が良かった。
「ふふ、本当に器用に食べますよね」
ガヤガヤと賑やかなレストランに来た。自分でもこんなマスク穴から食べながら、君の瞳に乾杯なんてギャグでしかないだろう、無いな…と思慮する。
「カオは何が好きなんだ」
「キラーさんが好きです」
「食べるものの話なんだが」
くすりと笑うと、カオは間違いに気がついて赤くなった。慌てているカオを見ながらパスタをすする。美味い。
パスタを飲み込むと、カオがマスクにはねたソースを拭いてきた。
「わたしはシチューが好きですけど、こうやってお世話できる料理も好きです」
マスクをつけている日も悪くない。でもまた次があるのなら、もっと良い店で、ディナーを食べたい。