北風と太陽

ガーゼを当てる。傷口は広く、見ているこちらが痛々しく感じてしまう。それなのに当の本人はなぜかケロッとしているのだ。

「キャプテンよりキラーさんの方が頑固なところがあります」

「あーすまんすまん。キッドを庇うなという話だろう。仕方ない、身体が動くんだ」

「キャプテンも無事でいて欲しいです。でもキラーさんはキャプテンを守ることを強く考えているように見えますから。自分も大切にしてください」

薬が塗られていることを感じながら、苦笑い。カオはこういう時、声の口調は優しいが難しいことを言う。

キラーは傷の処置が終わったとカオに伝えられると、上着を着た。今度はこちらが、助かったと伝えてカオにキスをする。

「ずるいと思います、キラーさんのキスは御礼になるんですから」

「これが礼に?したいからしているだけだ」

「わたしは…嬉しい、と思います。感謝されているように感じて。それに許してしまいそうにもなります、だから、ずるいと」

キラーは笑いながらまたキスをする。

「キラーさんは何をされたら嬉しいですか」

「カオと同じさ」

続けてキスして、これが嬉しい、と囁く。カオはキラーから目をそらしながら「そんな風にできません」と言って赤くなった。




「しかしなんとしても、できるようにならなければ」

カオは次の日、意気込んでいた。
キラーさんに自然にチュー作戦を決行するのだと、熱意を燃やし甲板の掃除をしている。

「まずは自然にできるような場所へ行って、それからキラーさんがするように実行。キラーさんの喜びはわたしの喜び…」

ブツブツと呟きながら掃除を済ませて調理場へ。カオはチキンライスを作りながら、作戦を考える。まずは自然とマスクを取るような状況にすること!

「キラーさん!ええと、あれ、おいしいですか?」

「ああ、うまいぞ」

驚いたことにキラーは器用にマスクのまま食べていた。失敗である。

料理がダメならお風呂だ!とカオはキラーが風呂場へ向かうのを確認し、そこへ突撃する。すぐにコラ!とつまみ出されてしまったので、これも失敗だ。

こうなれば寝る頃を狙おうとキラーの部屋で隠れていた。

しかし、一向にキラーは現れず。部屋は寒いが、バレないようにと灯や火を焚かずに待つカオ。どうしたことだろう、と思いながら鼻をすする。

そのまま、朝方まで震えていた。

やっと部屋に戻って来たキラーは灯をともしてギョッとする。カオが部屋の隅で膝を抱えていたのだから。こんな寒い部屋で。

「寒かったろう、いつからここに居たんだ」

「キラーさん…」

鼻声のような、ぐずぐずとしたカオの返事はよく聞き取れなかった。

「風邪ひいたんじゃないか」

「大丈夫です、風邪なんてすぐに」

「熱が出ないと良いんだが…」

キラーがマスクを取り、おでこを当ててきた。熱を測るために。近くて、キラーの額は冷たかった。マスクを取ったばかりの髪にはボサボサとマスクの跡クセが付いている。

ちゅ、

カオはそのボサボサ男にキスして、鼻をスンと鳴らした。

「キラーさんみたいにキスがしたくて、マスクを取るチャンスを待っていました」

「おれの方が熱が出そうになってきたじゃないか…」

「風邪をうつしてしまいましたか…?」

頬杖をつきながら、キラーは笑った。うつすと治るんだぞとキスをいっぱいして、活動までの1時間を二人でこってりと寝た。やはりカオのキスはいやらしくもうまくもないが、あたたかく、限りなく愛おしい。

キラーは先に寝たカオの頭に愛してるよと口づけて、秘密を作った。