来訪者
「あの船が、同盟を結んだという…海賊さんですね」
変わったカタチの船が近づいて来る。
キッド海賊団の船も風変わりではあるが、どこの船も特徴が何かしらはあるらしい。
カオは会ったことが無かった。同盟相手との話は電伝虫を通じていたり、どこかで密会をしていたりとしていたからだ。
今回は大きな武器の取引があり、直接船へとやって来た。武器庫がおかげで騒がしい。
「お茶はお好きでしょうか」
「出さなくて良い。そんなに愛想の良い奴じゃないからな」
客人のお茶を心配するカオは呑気なのかもしれない。どの海賊も行儀の良いものだと思うのは危険だと教える。このキッドの船こそ行儀が良いとはとても言えないのだが、カオはそう思っているらしい。
キッドが武器についてあれこれと話をつけているところ、やはり少し気になって、カオは同盟相手を隠れて見ていた。紅茶が好きそうな顔をしていると思いながら。
雲行きは、どうも悪くなっている。
「飯でも食って行かねえかって、おれは優しい言葉をかけてやってんだぜ」
「見え透いたこと」
「ああ、ああ、やっぱり気に食わねえ。キラー、こいつと仲良しできる気がしねえ」
「占うまでも無い。すぐに撤収した方が運気が良い」
キラーのため息だけが海を突き抜ける。
ホーキンスはキッドと目も合わさない。キッドはホーキンスの態度が気に食わない。相性が悪いとはいえ、少しは話し合いの場を作れないものだろうか。
同盟は仲良しごっこでは無い。だがこのまま仲悪くいれば、裏切られることは確実じゃないか。キラーはどうしたものかともうひとつため息をつく。
あまり上手くいっていないんだろうということは、カオの目にも明らかだった。
雰囲気が悪い、どうにか空気を変えられないだろうか。カオはソワソワと落ち着かない。
ソワソワに気がついたキラーは、睨み合いを続ける船長を放ってカオの方へ歩み寄った。
「キラーさん、あの」
「いつもああなんだ。まあ、キッドもキッドだが、奴も奴だ」
カオに助言すると、キラーはまだギスギスとしている船長たちに目を向ける。
帰ろうとするホーキンスを捕まえたのはカオであった。
「ホーキンスさん、紅茶はお好きですか」
その一言で。
「好きだ」
「よかった、準備します。ですから、もう少しゆっくりしていってください」
キッドもキラーも驚嘆のまなざしでカオを見つめた。また、ホーキンスのことも。
お茶の準備ができたと思えば、静かにカップを手に取るホーキンスの姿。借りてきた猫のようなホーキンスは、キッドに借門する。
「あれは、いくらだ」
「何の話だ」
「女」
「あれは売りもんじゃねえ。売る気もねえ。なあキラー」
キラーがコクリと頷く。心なしかホーキンスは残念そうであり、返事もない。
レモンを切ってカオは戻って来た。
「キャプテン、今日はレモンにしますか」
「まかせる」
「ホーキンスさん、ミルクかレモン、お砂糖は?」
「砂糖を」
砂糖を渡すと、カオはケーキも出そうと台所へ走って行ってしまった。
一杯の砂糖を溶かしながら、ホーキンスはそんなカオの背中を正視する。かと思えば、占いを始めた為に、キッドは気味悪がった。
「……10%」
「アア?」
「女を連れ去ることができる確率、10%」
キラーはホーキンスに刃物を向けながら、すぐに口を挟んだ。
「それは違う、0%だ」
そう一言を。キッドは荒く、笑った。
黙って素早く紅茶を飲み終えると、ホーキンスは帰るための板橋に足をかけたのだった。
ケーキを持ち、戻って来たカオはもう帰るのかと驚きながら「またいらしてくださいね」と声をかけた。
すると少しだけ、ほんの少しだけ笑ったホーキンスの顔にキッドもキラーもゾクリと背筋を凍らせてしまう。
もう来ないで欲しい。そう願うばかりだ。
カオはケーキを切り分けながら、何故だか眉間がしわしわになった2人を不思議に思うばかり。同盟というのは難しいらしい。