テイスティング
「お茶、持ってきました」
「ン」
お茶と呼ばれる飲み物は、いちごソーダだった。お茶ではないが、この人が「お茶」と呼ぶのはコレなのである。
この人、つまり、ワイヤーという男。
今日は珍しくカオとワイヤーが船に残っていた。キラーは初めて子供を留守番させる母親のごとく心配していたが、しぶしぶ島へ狩りに降りて行った。
「いつも食べていますよね。甘いもの、お好きですか」
船内、サブレをかじるワイヤーにカオは問う。よくワイヤーは何かを口にしていたからだ。
「食うと落ち着く」
「キャプテンもよく食べます。良いことですね」
「女と遊んで食ってよく寝る。お前もやると良い」
澄ました顔で、欲求に正直な生き物ですとケロリとしているワイヤーはまたひとくちサブレをかじった。カオもできるなら実行してみた方がいいのかななどと考えて呑気である。
「ワイヤーさん、ワイヤーさん」
「なんだ抜かせてくれるのか」
「アイスがあるんですよ。ソーダに乗せて、アイス屋さんをしませんか」
「持って来い」
カオはこれを街で見たことがあった。ソーダにアイスが浮かんで、とても綺麗だったのだ。
ボチャ、ボチャ、とアイスが入れられる。
アイスが溶け、ソーダに混ざってゆく。それが案外早いもので、グラスの中の銀河はすぐに濁った。
「あまり、その、綺麗ではありませんね」
「腹に入れば同じだろ」
クスクスとカオは笑う。
バタバタと騒がしい船元に、耳が動く。戻って来たのだろう、誰かが、慌てて。
「旦那、頭より先に帰って来たぞ」
「キラーさんは仕事が早いですから」
「独占欲が強いだけだろう。面白いよ、あの人は」
面白いとは、どうしたことかとカオは目をパチパチさせる。すれば、ワイヤーはカオの頭に鼻をひっつけ匂いを嗅いだ。
「カオはすっかり男くさくなっちまった」
「お風呂に入った方が良いということですか?」
いいや、とワイヤーが鼻を離しニヤリとすると怒りに狂って我を忘れたキラーが突撃して来た。きっと目が真っ赤だろう。