吝かでない
「キラーさん、着物綺麗になりましたよ」
「それはもういいんだ」
ワノ国で着ていた着物を手入れしたカオだが、キラーはもういつもの服しか着るつもりはないと言う。
「敵の物とはいえ、キラーさん和服も似合ってましたよ。またこれを参考にして、和服を作れば着てもらえますか」
「…それなら」
似合うと言われれば少し嬉しい。それにカオが作ったものなら、着ても良いのではないかなと思ったりする。
「あ!キラーさん、着物と、帯と、あとこれなんですけれど…これは使い方がわからなくて。これは洗濯はできそうだったので綺麗にはしたんですが」
カオが手に持って見せて来たのは紛れもなく、ワノ国では男の皆がつけている褌である。
カオは何かわからないようで、純粋に不思議に思ったのだ。知らないからといったこうも堂々と下着を、これは何ですか、なんて聞かれるとギョッとする。それも女に、惚れてる女に!
「これは!な、何でもない!おれが処分する!」
褌を取り上げると、カオはますますわからないという顔をする。処分するのなら雑巾にでもしませんか、なんて提案もされたが冗談じゃない。
深追いはしないカオを背に、褌を隠す。
隠している間にとんとんとカオは傷処置の準備を進めていた。
「それじゃあ、包帯変えましょう。前開きの服にしてくだされば楽だと思うのに、それを着るんですから。さ、自分で上着脱いでくださいね」
「前開きにするとカオが脱がそうとするじゃないか!あれは…その、いいだろう別に!」
怪我の手当てとはいえ、服のボタンをぷちぷち外して服を脱がされるのは心臓に良くない。少々更衣に痛みがあっても自分が脱ぐ方が良いとキラーは頑なに主張した。
「頑固なんですから。膿の匂いはしませんが、おかしく感じたら教えてくださいね。はい、傷口洗いますよ」
「カオの方が頑固だ」
バシン!と傷口を叩かれて肩を跳ねさせる。
包帯をパリパリと剥がし取ってゆくカオの顔は膨れっ面だった。
「もうこんなこと、嫌ですからね」
「あーすまんすまん、心配かけた」
「ワノ国は色々と勉強になりましたが、キラーさんの心配で胸が張り裂けそうでしたよ」
薬を塗りながら、カオは膨れっ面から悲しそうな顔になる。それがとても胸に突き刺さった。ワノ国は変わるだろうか、こんなに人を悲しませておいて。
「そういえばワノ国の女性に習ったことですが女性は主人を、旦那様、と呼ぶらしいですよ。あと、あなた、なんて呼んでる人が居たりして。言葉の違いですね、素敵でしたよ」
「どうしてそんな話を」
「キラーさんのことを話したら、帰って来た時そう呼んであげなさいと」
それは大きな誤解を招いていると思うのだが、いや良いのだけれど。
「お呼びしましょうか?」
「えっ」
「旦那様」
そう呼ばれて手を重ねられると、カッと熱くなった。
そうしてまた傷口が開いたキラーはこっ酷く叱られて、キッドが焼いて傷口を塞いでやると叫んでいたのであった。