よきかな
「キラーさん落ち着いて!おれたちは別に!」
「副船長笑い声出しているのにこわい!」
ファッファッと笑っているキラーだが、その姿は殺意に満ち溢れていた。
「だってそういう場でしたし!」
船員は言い訳をするが、キラーは落ち着くことはなく。
ワノ国では、混浴が可能である。その事実に気づいたのは、キラーが戻ってしばらくしてからだ。混浴に入ったのかと聞けば、カオは入ったと言う。船員に聞けば、すみません入りましたと言う。
賢いキラーは、すぐに気がつく。ああこいつらカオが居る時にも入ったのだなと。何組かで別れていた船員たちは、待機の組も居たのだ。船番や偵察をしていた。
「怒らなくても、キラーさん。それが国の文化だったんですから良いじゃないですか。大きなお風呂は気持ちよかったですよ」
カオはよくわからないままでキラーをなだめた。カオは自分の裸も下着も恥ずかしくない、その辺は無頓着なところがあるため、気にしていなかった。キラーはそれを利用して混浴した野郎どもが気にくわない。
「そんなに言うのならキラーさんも入ればいいじゃないですか」
「カオはもっと慎みを持て!」
そんな言い合いをしている頭上、太陽は動いていく。
入りたかったな、カオと風呂に…そんな叶わぬ夢を見ながらうなだれるキラーは机に突っ伏している。そこへやって来たのは船員F。
「キラーさんキラーさん」
「なんだ…」
「良いものを持って来ました」
こんな男じゃなくて、カオが来てくれたら良かったのに。
「これ、隠し撮りなんですけどね。元気出してくださいよ、悪かったと思ってるんですから」
船員Fが辺りを見回して封筒を渡して来た。なんだ賄賂かとキラーは重たい気持ちで封を切った。金にしては封筒が薄い、と思いながら中身を出すと目を見開いてしまった。
「これは」
「カオさんのワノ国に馴染む格好…つまり和服姿のカオさんです。もう拝むことはできないと思って納めておきました」
悪い顔をして話す船員Fは、これでどうかひとつ…と頭を下げてきた。
「まあ、おれは別に、何とも思っていなかったぞ。はやく持ち場に戻れ」
ヘーイと戻って行く男。ありがとう、感謝する。ありがとう、ありがとう。
今まで写真というものを持ったことはなかった。カオの写真、和服の。まじまじと見てしまった写真に穴が空きそうだ。
「綺麗だ…」
ワノ国も普通に観光として来られたなら、良いことがたくさんあったのかもしれない。ポケットに写真を納めて机に肘をつく。
カオはといえばワノ国で学んだ料理を作っていた。今晩の夕食である。嫌な思い出はある国だが、今は料理のレパートリーは増えたことを喜んでいた。