澄み切る心境
「シーッ!静かに来い、いいか起こすなよ」
「ああわかってる。キラーさんにはバレなかったか?」
「そりゃあそうさ。バレたらタダじゃすまないぞ!」
ガヤガヤと騒がれているのは炊事場の一角。テーブルに突っ伏してカオがうたた寝をしていた。それをやあ珍しいと野郎が見に来ているのだ。
「癒される…」
「カオちゃんは垂涎の的だ」
「撫でても起きないんだぜ」
「あ!ずるいぞ!それキラーさんがいたらできないんだからな!」
船員たちのガヤガヤは大きくなり、どうしたことだとやって来たのは噂のキラーさんである。
「なにしてるんだ」
「ギャ!出た!」
まるで化け物でも見たかのような部下にキラーは顔をしかめる。もちろんその顔はマスクでわからない。
「カオ…」
少し覗きこめば、カオがぷうぷうと寝ていることが確認できた。髪がくしゃくしゃとしているを見れば、オモチャにされたことはすぐにわかった。
野郎共は苦笑いをすると尻に帆を掛けて逃げる。やれやれとため息をついて、カオの顔を覗き込む。本を読んでいたようだ。紙というものはあたたかい。たしかによく寝ているし、良いにおいがするし、寝顔もかわいらしいと思う。
別に悪いことをしているわけではないが、なんだかソワソワとするキラー。二人でいることはもう珍しくないというのに、心にはやりたいこの欲にまみれていた。
マスクを外して、頬を吸うとカオの手がバシ!とキラーの顔に命中する。キラーはパチリと目を覚ましたカオと目があった。
「いま虫が…」
「そ、そうか」
虫ということにされたキラーの頬は赤くなっていた。
「すみません、ついウトウトとして」
「よく寝ていた」
カオは慌てて髪を手ぐしで直し始める。その手を掴み下ろすと、代わりに髪を整えてやる。素早く髪が指を通り抜ける度にカオの目はあちらこちらに泳いでいた。手を止めると、カオが世話をされることに弱いのだとわかっていたキラーはフフンとほくそ笑む。
「マスクの下では、いつもそんなにいやらしい顔をしているんですか」
「見ているのはカオだけだ」
嬉しいような嬉しくないようなという顔をするカオに、またキラーは笑った。その顔にチュ、と口づければ、ハッしたキラーの顔は赤くなってしまった。
特権ならば使うべきだとカオは威張っていた。