果たせる哉

キッド海賊団の船には、キッドが手を加えたものがいくつかある。アイロン、キッチン、金庫、時計、様々なものを本人が趣味で改造をしている。昔から器用であったとキラーは感心半分、迷惑半分。

風呂場、カオが今はシャワーを浴びている。このシャワーもキッドが勝手に取り付けたもので、水の勢いもキッドが好みに変えたものだ。

そのシャワーの温かいお湯が気持ちいいと思っているのも束の間、透明な水は赤黒い液体に変わった。突然のことである。
これは血なのではないか、と思うとカオは背筋が凍った。赤いシャワーに居ても立っても居られなくなったカオは悲鳴をあげながら浴場を飛び出した。

「キャー!」

「ワー!?」

バスタオル一枚で飛び出して来たカオに次の悲鳴をあげるキラー。

「大変ですキラーさん!シャワーから血が!」

「それよりも早く何か着…」

言いかけていると、カオのタオルははらりと落ちた。ラッキースケベというものは突然に。不意打ちはどうしてこうも効くのだろう。



意識を戻すと、ちゃんと服を着たカオが居た。遠くに見えるのはキッド。パイプを開いて水道を見ている。

「キャプテンが見てくれています。キラーさん倒れてしまったんですよ。大丈夫ですか」

「別に、大事ない…いいものを見た気がする」

「さっさと起きて手伝え色ボケマスク」

返事も無く起き上がろうとすると、少し頭を上げて気がついたことがひとつ。カオに膝枕をされていることだ。起き上がりかけて、吸い寄せられるようにまた頭を戻した。し、幸せだ…このまま死んでも悔いはない。ホワァっと口元が緩んだ。

「おいこら手伝えってんだよ!スパナで殴られてえのか!」

「殴られてもかまわん。おれはここで死ぬ!」

血管が切れそうな顔でキッドは怒鳴る。スパナを振り回して威嚇をするが、今のキラーには何も効果は無いようだ。だがこういう時の対処法をキッドはよく知っている。

「カオ、こっち来い。手伝え」

「はいキャプテン」

カオは言われて直ぐに立ち上がり、膝から落ちたキラーの頭は床におもいっきりぶつかった。

「キッド!」

「うるせー、そこで寝てるんだろ」

渋々と起き上がり、一緒に水道を見た。あちこちでサビが広がっている。このサビが水の変色の原因らしい。

「新しくすりゃいい。血じゃねえ」

手際良く工事をしていくキッドに、カオは目を輝かせていた。

「すごい、キャプテンは何でもできてしまうんですね。さすがキャプテンです。尊敬し直しました」

「キッド、おれがやる」

「わかりやすく妬いてんじゃねえ!」


工事は夜通しかかり、作業の灯りが消えたのは日が昇るタイミングと変わらなかった。